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「人民元切り下げは輸出支援のためではない」という中国の説明は本当か?

2015/8/21(金) 6:00配信

THE PAGE

 中国人民銀行による事実上の通貨切り下げは市場に大きな混乱をもたらしました。中国が通貨を切り下げた主な理由は、元安による輸出のテコ入れというのがもっぱらの見方ですが、人民元の自由化をにらんだ別の狙いがあるともいわれています。中国は本当のところ何を目的に通貨を切り下げたのでしょうか。

 中国人民銀行は、11日から3日連続で、対ドル為替レートの「基準値」を引き下げました。中国は、人民元の為替相場を一定の範囲内でコントロールする「管理変動相場制」を導入しており、人民銀行による意図的な為替レートの操作が可能です。今回は人民元をドルに対して安くする操作ですから、これは事実上の通貨切り下げということになります。

 市場での混乱が大きかったことから中国人民銀行は異例の会見を開き、一連の基準値引き下げは、人民元の基準値を市場の実勢レートに合わせるための措置であり、輸出を支援するためのものではないとの釈明を行いました。しかし、中国の輸出はこのところ伸びが大幅に鈍化しており、国内の景気も失速しているといわれています。人民元がドルや日本円に対して安くなれば、輸出産業の収益は拡大しますから、今回の措置に輸出支援という狙いが含まれていることはほぼ間違いないでしょう。

 ただ、このタイミングでの切り下げになった背景には、もう少し複雑な事情があるとの見方も出ています。それは人民元の特別引出権(SDR)採用問題です。

 中国は各国に対して大国としての処遇を求めており、IMF(国際通貨基金)のSDRを構成する通貨に人民元が採用されることを望んでいます。SDRとは、IMFが加盟国の準備資産を補完することを目的に創設したしくみで、資金不足に陥った加盟国は、SDRを各国通貨に交換した上で、一定の範囲内で引き出すことができます。SDRはドル、ユーロ、ポンド、円の主要4通貨の加重平均で決められていますが、人民元をここに加えようというわけです。

 しかし、SDRに採用されるためには、その通貨が国際的な信用を得ていることに加え、自由に取引できる環境が必要となります。IMFは当初2016年1月に構成通貨の見直しを実施するはずでしたが、8月4日には、これを先延ばしすべきという報告書を公表しています。人民元の価格決定が完全に市場に委ねられていないというのが主な理由なのですが、人民元の切り下げが実施されたのは、この報告書が出た直後でした。

 中国当局のホンネは通貨切り下げによる輸出支援と考えられますが、こうした措置は海外から批判を浴びることになります。価格形成を市場に委ねるべきというIMFの報告書が出たタイミングで切り下げを実施することによって、輸出支援であるとの批判をかわす狙いがあったと考えられます。

(The Capital Tribune Japan)

最終更新:2015/11/22(日) 4:14
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