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諜報の世界に真の同盟国はない 米国の対日盗聴から考える

2015/9/24(木) 18:30配信

THE PAGE

 米国家安全保障局(NSA)が日本の政府高官や大手企業などを盗聴していたと内部告発サイト「ウィキリークス」が公表した問題が波紋を広げました。安倍首相は「仮に事実であれば同盟国として極めて遺憾」と国会答弁で述べました。NSAとは、盗聴や暗号解読などを担当する国防総省傘下の機関ですが、このような情報収集活動を、どのように受け止めればいいのか。インテリジェンスの問題に詳しい軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏が解説します。

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独メルケル首相の電話も長年盗聴

 7月31日、機密情報告発サイト「ウィキリークス」が、アメリカが日本で盗聴を行っていたことを示す資料を暴露しました。経産相、官房長官秘書官、政府高官、日銀、三菱商事や三井物産のエネルギー部門など、少なくとも35カ所の日本国内の固定電話が盗聴されていたということでした。

 最大の同盟国であるアメリカが日本をスパイしていたということですが、そんなことは情報の世界では当たり前のことです。たとえば昨年10月にも、ドイツのメルケル首相の携帯電話が長年にわたって盗聴されていたことが発覚しています。

 情報の世界では、真の同盟国というものは存在しません。安全保障上の同盟国でも、相手国の本当の考えを知っておくことは何かとメリットのあることであり、相手国との同盟関係にヒビが入らない程度にスパイすることは、しばしば行なわれてきました。

 それはアメリカに限った話ではありません。首相が盗聴されていたドイツでも、首相直属の対外情報機関「連邦情報局」(BND)が、フランスの外交官を含む多数のドイツ発着信のメールや携帯電話の傍受を行っていたことが、今年4月に独誌『シュピーゲル』で報じられています。しかも、BNDにその工作を依頼したのはアメリカの通信傍受機関「国家安全保障局」(NSA)だったそうです。NSAは前述したメルケル首相盗聴を実行していた機関ですが、このように情報の世界では、同盟国間でもときに協力しつつ、ときにスパイし合うということが日常的に行われています。

 また、イスラエルとアメリカは事実上の同盟国であり、情報の世界でも対中東諸国や対ロシアなどのスパイ工作ではしばしば協力関係にあるのですが、1985年にはイスラエルのスパイだったユダヤ系米国人の米海軍将校が摘発されています。イスラエルにとっては、アメリカもまた諜報工作の対象ということなのです。

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最終更新:2016/1/26(火) 4:23
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