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官民対話、政府は企業に一体何を求めているのか?

2015/11/6(金) 10:31配信

THE PAGE

 安倍政権は、企業に積極的な設備投資を促す官民対話に乗り出しました。企業が抱える内部留保を積極的に活用してもらおうということなのですが、企業側は慎重なスタンスです。

日本企業の内部留保は約354兆円

 これまで安倍政権は、法人減税の実施や優遇税制の維持など、企業の利益になる施策を行う一方、企業に対して多くの要請も行ってきました。中でも賃上げと株主還元はアベノミクスを象徴する方策といってよいでしょう。今回の設備投資強化の要請は、これらに続く第三弾ということになります。

 日本の大手企業は過去最高水準の利益を計上しており、利益の蓄積である内部留保も増加の一途を辿っています。2015年3月末現在の日本企業の内部留保は約354兆円、このうち210兆円は現預金のままという状況です。企業の売上高に対する設備投資の割合は減少傾向が続いており、企業は積極的に投資を行っていません。企業の設備年齢(設備を新しくしてから経過した年月)は過去20年間で5~6年老朽化しており、古い設備が更新されていない状況が推察されます。

 官民対話では、経団連から「積極果敢にリスクをとって投資拡大に取り組むよう呼びかけを強化する」との発言が出るなど、前向きな議論が進んでいるようですが、企業のホンネは別のところにあると考えられます。

望めない長期的な市場の拡大

 日本は人口が減少しており、長期的な市場の拡大が望めません。一方、海外のマーケットは不慣れでリスクが大きいため、尻込みする企業が多いというのが現実です。日本は規制に守られた産業が多く、そもそも無理にリスクを取る必要がありません。規制緩和は多くの国民が反対していますし、雇用の流動化も同じく多くの国民が望んでいません。企業としては、コスト削減を進めつつ、現状を維持するのがもっとも合理的ですから、新規投資には積極的になれないというのが正直なところでしょう。

 本来、企業はどのような環境であれ、常にリスクを取って事業を開拓するのが使命ですが、日本企業は、本来企業が持っている積極性を発揮できない状況にあり、これが景気低迷の大きな要因になっているわけです。

 安倍政権はこうした状況を打開するため、2度にわたって企業に賃上げ要請を行うとともに、コーポレートガバナンス改革を通じて、株主還元策の強化についても企業に強く迫りました。賃上げと株主還元は企業にしてみれば相反する施策ですから、政府の方針は矛盾したものに映ります。今度はそれに続いて設備投資の強化を要請しているわけですが、政府が企業に対して何をして欲しいのかはっきりしません。

 投資を促す政策そのものは重要ですが、企業の経営判断に政府が関与する以上、もう少し筋道立った景気回復へのシナリオを提示する必要があるでしょう。

(The Capital Tribune Japan)

最終更新:2015/12/7(月) 2:38
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