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老後の面倒は誰が見る?(中)老人ホームはどこに? 地方移住という議論も

2015/11/25(水) 8:00配信

THE PAGE

 前回は、日本の介護制度は基本的に家族が介護することを前提に設計されているという話をしました。このため介護離職はやむを得ない結果と考えられていたのです。安倍首相が提示した介護離職ゼロという方針がホンモノであれば、希望する人は、全員、特別養護老人ホーム(特養)への入所が実現するということになります。つまり在宅を基本とする、従来からの介護政策を180度方向転換したことになるわけです。介護関係者の多くが、この目標を聞いて驚いた理由はここにあります。

【連載】老後の面倒は誰が見てくれるのか

介護政策の大転換なのか?

 安倍政権がどの程度、この政策に本気なのかは分かりませんが、もし介護政策の大転換ということであれば、非常に画期的な決断といってよいでしょう。しかし現実にはかなり高いハードルが待ち受けているようです。介護離職をゼロにするためには、特養を大幅に増設する必要があるからです。

 厚生労働省は介護離職ゼロという目標設定を受け、特養に関する規制を都市部に限って緩和する方向で動き始めました。これまで特養は、社会福祉法人が自ら建物を建てて所有する必要がありましたが、東京など都市部に限ってこの規制を緩和し、地主が建物を建て、丸ごと社会福祉法人に貸し出すことを認める方針です。自ら建物を所有する必要がないため、資金面での柔軟性が高まり、特養の整備が進む可能性があります。

規制緩和については反対の声も

 ただ、今回の措置は、東京などごく一部の地域に限定されたものであり、社会福祉法人が自ら建物を所有するという原則は変えません。また、他の地域での緩和も行わない方針であると報道されています。もし、一部地域での緩和にとどまれば、大きな効果は得られない可能性が高いでしょう。

 特養については、株式会社など民間からの参入を活発化すべきとの声も聞かれますが、これまで特養を運営してきた社会福祉法人などを中心に規制緩和については反対の声も根強く残っています。

 さらに言うと、特養をどこに作るのかという問題も重要です。今年6月、日本創成会議(座長・増田寛也元総務相)が、首都圏の高齢者を地方に移住させるのが望ましいとの見解を発表して話題となりました。首都圏での介護施設の不足が予想されることが主な理由です。

 しかし、介護施設の場所を地方に限定してしまうと、介護を前提に引っ越しをすることになってしまい、また別の問題を引き起こす可能性があります。特養施設は、土地の造成や建物の建設などが大きく関係しますから、場合によっては政治的な利権になりやすいという特徴もあります。どこに特養を作るのかという問題については慎重に検討する必要があるでしょう。(下に続く)

(The Capital Tribune Japan)

最終更新:2016/1/26(火) 3:32
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