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最低賃金1000円に引き上げ、その効果は?

2015/12/3(木) 12:31配信

THE PAGE

 安倍首相は11月24日に開催された経済財政諮問会議において、最低賃金を引き上げ、全国平均で1000円を目指すと表明しました。最低賃金の引き上げで消費を拡大させようという目論見ですが、果たして効果はあるのでしょうか。

 現在、日本の最低賃金は全国平均で798円となっています。金額には地域差があり、もっとも高い東京は907円、もっとも安い沖縄や高知などでは693円です。日本の最低賃金が国際的に見て極めて安いという事実はよく知られています。フランスは9.6ユーロ(約1249円)、英国は6.7ポンド(約1242円)、米国は州によって異なりますが各州を平均するとだいたい8ドル(約983円)位になります。米国でも都市部ではシアトルのように15ドルへの引き上げを決定したところもあります。

 安倍首相は、現在798円となっている最低賃金を毎年3%ずつ引き上げ、最終的には1000円を目指すとしています。日本は円安によって輸入物価が上昇しており、労働者の実質賃金は下がる一方です。現在の最低賃金では生活を維持するのがやっとですから、これを引き上げることができれば、国民の所得向上に一定の役割を果たすことになるでしょう。

 ただ、今回の最低賃金引き上げは、3%という数字からも分かるように、安倍政権が掲げた名目GDP(国内総生産)600兆円という目標を達成するための施策のひとつです。安倍政権は、経済界との間で開催している官民対話において財界に対して3年連続の賃上げを強く要請しており、経済財政諮問会議では3%の賃上げが必要との見解が出ています。2020年度に名目600兆円のGDPを達成するためには、計算上、年3%ずつGDPが増える必要があることを考えると、賃上げや最低賃金の引き上げ水準は、これを意識して作られたものと見て間違いないでしょう。つまり、600兆円ありきの政策目標というわけです。

 現在、日本経済は非常に供給がタイトとなっており、このタイミングで強制的に賃上げを実施すると、物価上昇に弾みがつく可能性があります。人件費の高騰が、生産性向上のための改革につながってくれば、経済はよいメカニズムで回り始めます。一方、企業が現状の利益維持だけを考えてしまうと、人件費の高騰が値上げを加速させる形となり、労働者の実質賃金は増えません。

 最低賃金引き上げを、実質経済の持続的な回復につなげていくためには、女性の社会進出の活性化や労働市場の整備など、制度的な側面支援が不可欠です。

(The Capital Tribune Japan)

最終更新:2016/2/3(水) 4:15
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