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従来型の慈善活動に疑問? ザッカーバーグ氏5兆5000億円の寄付を考える

2015/12/10(木) 8:00配信

THE PAGE

 フェイスブックCEO(最高経営責任者)のマーク・ザッカーバーグ氏と妻のプリシラ・チャン氏による5兆5000億円にものぼる寄付が話題となっています。しかし、その中身をよく見ると、従来の意味での寄付とはだいぶ違っているようです。ザッカーバーグ氏のやり方については、いろいろな意見もあるようですが、少なくとも寄付や慈善活動というものを考え直すよいきっかけにはなるでしょう。

一般的には財団に寄付することが多い

 ザッカーバーグ氏はフェイスブックの自らのページで第一子が誕生したことと、自身が保有するフェイスブック株の99%を慈善活動に寄付すると発表しました。

 億万長者が巨額の寄付を行うことは米国では珍しいことではありませんが、ザッカーバーグ氏の場合には、これまでとは様子がだいぶ異なっています。その理由は、寄付する先が、財団ではなく、自身が所有するLLC(有限責任会社)だからです。

 米国において億万長者が積極的に寄付を行うのは、社会貢献をしたいという純粋な動機もあるでしょうが、税金面での優遇が大きく関係しています。一般的に、資産の寄付は財団を設立する形で行われることが多いのですが、財団を設立すれば、NPOなど慈善団体への資金拠出が義務付けられる代わりに各種税金が免除されます。

 一方、財団にしてしまうと、そのお金は名義上、自分のものではなくなってしまい、財団の運営に関与するという形で間接的にしかその資金を使うことができません。ホンネでは、こうした形は望んでいないと思われますが、税制面でのメリットや社会的な名誉などを総合的に考え、財団への寄付を行うケースが多いのが現実です。

ザッカーバーグ氏は民間企業に寄付、従来の慈善活動に疑問?

 ところが、今回の寄付は、自身が所有する民間企業に対して行われます。企業の創業者が、持ち株を個人の所有から資産管理会社に移管するケースは多いのですが、今回のケースも形式的にはそれと変わりません。ザッカーバーグ氏は、その会社を慈善事業のプロジェクトを目的として運営するという意味で寄付と呼んでいるものと思われます。

 資金の受け皿となるLLCは、書類上は純粋な営利企業ですから、当然、税金対策にはなりません。それでもザッカーバーグ氏がこうした形式を選択したのは、従来の慈善活動に疑問を持っているからとも言われています。

 ザッカーバーグ氏はかつて学校などに巨額の寄付を行ったものの、寄付金の分配をめぐって組織の内紛が発生し、本当に困っている人にはお金が行き渡らないという苦い経験をしました。このため、ただお金を渡すだけの従来型の寄付には疑問を感じているようです。

 一部では、ザッカーバーグ氏はLLCを通じて長期的なインフラ投資事業に進出する、あるいは政治家に対するロビー活動を行うなどと報道されています。LLCは資金使途に制限がありませんから、理論的にはどのような事業にもお金を投じることができます。そうであればアマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏が個人的に宇宙事業に投資していることと何が違うのかという疑問も出てきます。

 ザッカーバーグ氏の試みが、慈善事業の新しいスタイルを確立する画期的なものとなるのか、単なる個人的な投資にとどまるのかは、今後の実績次第ということになるでしょう。

(The Capital Tribune Japan)

最終更新:2016/2/10(水) 3:13
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