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産経新聞ソウル前支局長に無罪判決、韓国の裁判所が示した判断の根拠とは?

2015/12/23(水) 7:00配信

THE PAGE

 掲載したコラムの内容が朴槿恵大統領の名誉を傷つけたとして韓国で起訴された産経新聞前ソウル支局長に無罪判決が言い渡されました。当然の判決ですが、なぜ無罪なのかという理由について韓国の裁判所は的確な指摘をしています。これはわたしたち日本人にとっても参考となるでしょう。

 産経新聞の加藤達也前ソウル支局長は、執筆したコラムが朴槿恵大統領の名誉を毀損しているとして在宅起訴されていました。問題のコラムは、昨年4月に起きた旅客船沈没事故の当日、朴槿恵大統領の所在が一時分からなくなっていたという朝鮮日報の記事を引用したものです。朴大統領が元秘書の男性と一緒にいた可能性を示唆したことが、大統領の名誉毀損にあたると判断されたようです。

 民主国家の一般常識として、言論の自由が保障されていますから、批判的な記事を書いたという理由で起訴するようなことはあってはなりません。韓国が民主国家であるならば、当然、無罪判決となるべきものでしょう。その意味で今回の判決は妥当なものですが、判決を出したソウル中央地方裁判所は、非常に興味深い指摘をしています。言論の自由については「憲法で保障されている」ことを明確にした上で、公職者に対する批判は「その地位が高ければ高いほど、可能な限り許容されるべき」としているからです。

 これは米国における現実的悪意の法理に近い考え方であり、非常に先進的といってよいでしょう。現実的悪意とは、公人が批判記事に対して名誉毀損で損害賠償請求する場合(民事)に適用されるルールのことです。公人の場合には、報道する側が、嘘の情報と知っていながらあえて報道している、もしくは、嘘かどうかも検証せず無謀に報道しているという、どちらかの要件を満たさない限り名誉毀損は成立しません。つまり公職にある人は、よほどのことがない限り、プライバシーや名誉は制限されるという考え方になります。

 なぜこのような考え方が適用されるのかというと、公職にある人は、自らへの批判を封じ込めるために高額の訴訟を乱発する可能性があり、それが蔓延すると、民主主義を機能不全に陥れる危険性があるからです。

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最終更新:2016/2/23(火) 2:58
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