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日本企業の設備投資が進まないのは政府の矛盾した要請が原因か

2015/12/25(金) 7:00配信

THE PAGE

 政府は、企業に対して設備投資の増額を強く要請していますが、企業の動きはあまり積極的ではないようです。市場関係者の一部からは、政府の要請が矛盾したものとなっており、企業の行動に結びつきにくいとの指摘も出ています。なぜ企業は国内の設備投資に積極的になれないのでしょうか。

 政府の強い姿勢を受け、経団連の榊原定征会長は官民対話の場において、設備投資を今後3年間で10兆円増やすことが可能であると発言しました。経団連が各企業に対して設備投資の活性化を呼びかけるほか、経済産業省も各業界団体へ異例の要請を行う予定となっています。しかし企業側の動きはあまり活発ではありません。

 企業側の動きが鈍い理由のひとつとして、政府の経済政策の矛盾を指摘する声があります。これまで安倍政権は企業に対して株主価値を増大させるよう強く要請してきましたが、こうした要請を行う理由は、厳しい状況に置かれている年金財政を改善させるためです。企業の利益を拡大させ、配当を増やすことで、公的年金の運用益を増やそうとしているわけです。

 一方で政府は、賃上げと国内の設備投資強化も強く要請しています。しかし、資本市場の理論に沿って考えると、これらを同時に達成することはできません。その理由は、資本コストの理論を当てはめれば分かります。

 資本コストは、銀行から資金を借りる際の金利や、株価の上昇率、株主への配当などから計算されるものですが、企業の経営者は理論上、資本コストを上回る収益が見込める事業にしか投資できません。

 政府は配当の増額や株価の上昇を求めていますから、企業の資本コストは急激に上昇することになります。政府が求める資本コストに対応するためには、賃上げを抑制しなければなりませんし、極めて高いリターンが得られる海外の投資案件に対象を絞る必要が出てきます。しかし政府は一方で、賃上げと国内への投資も要請していますから、これらの要請は相互に矛盾していることになります。この結果、企業はどのように行動したらよいのか、分からない状態となっているわけです。

 本来、企業というのは、政府からあれこれ指示されなくても、常に高いリターンを求めて、自主的に意思決定を行っていくものです。その意味では、今の日本企業は完全に機能不全を起こしていると見ることもできますが、政府のちぐはぐな要請もこうした状況の一端を担っている可能性があります。

(The Capital Tribune Japan)

最終更新:2016/1/25(月) 2:36
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