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原油安がもたらすもう一つの影響、ISとロシアに大打撃?

2015/12/31(木) 7:00配信

THE PAGE

 OPEC(石油輸出国機構)は、原油の生産目標設定を見送る決定を行いました。つまり減産を行わないわけですから、今後も、原油価格は安く推移する可能性が高くなったと見てよいでしょう。

 原油価格については、世界経済の動向や先進国の消費という視点で報道されることが多いのですが、もうひとつ重要なポイントがあります。それはテロ活動を行っているIS(イスラム国)の資金源という問題です。

 ISの活動資金の多くは、制圧した拠点から産出される石油であるといわれています。ISは国際的な密売業者を介して石油を輸出しており、これによって活動資金の多くを稼いでいます。ISは国際的に孤立していますから、本来であればISから石油を買う国はないはずです。しかし、現実にISは石油を販売しており、外貨を獲得できています。その理由は、ISの敵となっている周辺の国々が実は積極的にISから石油を購入しているからです。

 シリアのアサド政権はISと内戦状態にありますが、シリア国内では油田の多くをISに制圧されており、石油を自由に確保することができません。この結果、密売ルートを通じて、敵対するISから石油を買うという矛盾した状況となっています。最近ではこれに加えてトルコがISから石油を購入しているのではないかとの疑惑が持ち上がりました。

 トルコがロシアの戦闘爆撃機を領空侵犯で撃墜するという事件が発生したのですが、ロシアはこれに反発、プーチン大統領は、トルコのエルドアン大統領一家がISからの石油密輸に関与していると名指しで批判しました。真偽の程は定かではありませんが、もし本当であれば、表面的には戦争をしながら、背後では石油を購入しているという奇妙な関係ということになります。

 ちなみに、ISは1日あたり4万バレル程度の石油生産能力があるといわれています。現在、原油価格は1バレル40ドル前後ですから、ISは年間で6億ドル(720億円)ほどの収入がある計算です(密売価格のレートはもっと安いと思われますので、現実には500億円程度になるでしょう)。

 原油価格は今年の前半は約60ドル、昨年は100ドル前後の水準でしたから、ISには今の2倍以上の豊富な資金が流れ込んでいたことになります。今回OPECは減産を見送りましたから、当分の間、原油価格が上昇する見込みはなくなりました。OPECの決定は、ISの活動能力を低下させる効果があるでしょう。

 もっとも、原油安が続くことは、国家収入の多くを石油に依存するロシアにとっても大打撃です。ロシア経済は原油安とクリミア侵攻に伴う各国の経済制裁でボロボロの状態です。プーチン大統領が、テロ対策での各国協調を積極的に働きかけるのは、経済制裁を解除してもらい、何とか苦境を脱したいとの意図があると考えられます。

(The Capital Tribune Japan)

最終更新:2016/1/31(日) 2:35
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