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TPPの試算が当初の4倍に、これって盛りすぎ?

2016/1/9(土) 7:00配信

THE PAGE

 今国会の焦点の一つはTPP(環太平洋パートナーシップ協定)ですが、政府が出したTPPに伴う経済効果の試算が波紋を呼んでいます。2013年に出した前回の試算に比べて経済効果が4倍にも膨れあがっているからです。一部からは、TPPの成果を強調するあまり、データを過剰に操作しているのではないかとの指摘も出ています。

新しい試算では経済効果が4倍に

 政府は先月24日、TPP発効に伴う経済効果の試算を公表しました。それによると、実質GDP(国内総生産)は2.6%の増加となり、2014年度のGDPを用いて金額換算した場合、14兆円の経済効果が得られることが分かりました。また生産性の向上などにより、労働供給が約80万人増加し、農業に対する影響も、当初は3兆円の減少だったところが、1300億円から2100億円の減少にとどまるという結果も得られています。

 政府はTPP交渉への参加を決めた2013年に、同様の経済効果に関する試算を行いました。前回の試算では金額ベースで3兆2000億円のプラスという結果でしたから、新しい試算では、前回試算と比較して経済効果が4倍になったわけです。TPPの経済効果の試算には、経済学で用いられる一般的な均衡モデルが採用されており、基本的な手法は前回と大きくは変わっていません。それにも関わらず結果がこれほどまでに食い違っているのは、いくつかの前提条件を変えたからです。

どうして4倍にまで拡大した?

 前回の試算では、輸出入が拡大することで企業の生産性が向上するという内生的な効果や、それに伴って実質賃金が上昇し、労働供給が増えるというメカニズムはあまり考慮されませんでした。また貿易の円滑化によって、非関税障壁が撤廃され、それによって貿易コストが低下するという流れも考慮されていません。今回の試算はこれらのメカニズムがフル稼働するという前提条件を置いたことで、効果が4倍にまで拡大したわけです。

 しかし、得られた数字があまりにも違いすぎることから、今回の試算に対しては疑問の声も出ています。現在、日本経済は実質賃金が低下し、労働供給がタイトになるという状況であり、この試算が示すシナリオとは逆の動きが顕著となっています。また企業は設備投資に消極的であり、政府は設備投資を増やすよう異例の要請を行っていますが、目立った効果は得られていません。TPPによって大幅に国内の消費や投資が増えるというシナリオは少々考えにくいというのが現実でしょう。

 ただ、マクロ的に見れば、日本のように競争力の高い先進国は、TPPを受け入れるメリットが大きいと考えられます。TPPの成果を強調したいという政府の意図は分からないでもありませんが、むしろTPPを契機として、試算で提示されているような経済効果を目指すべきという目標値として捉えた方が適切かもしれません。


(The Capital Tribune Japan)

最終更新:2016/2/9(火) 2:37
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