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どうして経済の実態と統計データが乖離するのか?

2016/1/16(土) 13:23配信

THE PAGE

 このところ経済統計と実体経済との乖離がよく話題となりますが、具体的にはどのようなことなのでしょうか。そして経済統計は今後、どう変わっていくべきなのでしょうか。

研究開発費は投資の扱いに

 内閣府は、今年の7~9月期のGDP(国内総生産)から算出方法を変更します。GDPの支出項目のひとつに投資というものがありますが、これまで企業の研究開発費は、中間消費という扱いになっており、投資とはみなされていませんでした。

 しかし研究開発費も、通常のインフラ投資と同様、将来にわたって富を生み出す要因であることから、投資として扱う方が適切という考え方が一般的になっています。国連が2008年に策定した新基準に研究開発費のGDP算入が盛り込まれたことから、日本でも導入に向けて準備が進められてきました。研究開発費が算入されると、名目GDPはこれまでより3%ほど上乗せされることになります。

家計調査はサンプル世帯が対象

 これに加えて、近年、議論が活発になっているのが、消費に関する統計です。家計の消費に関する分析には、総務省がまとめている家計調査のデータが使われています。代表的な指標は「二人以上の世帯」の消費支出なのですが、この数値は2015年に入ってから大幅なマイナスとなっていました。一方、供給側からの調査ではこれとは異なった結果が出ており、全国の小売業の販売額はむしろ増加傾向が顕著です。

 家計調査は、総務省がサンプルとなる世帯を選び、家計に関する詳細情報の提供を受ける形で作成しています。調査項目が細かいため、家計簿をしっかり付けているような家庭でなければ、調査に100%対応することはできません。こうした状況に合致する家庭ということになると、高齢者の専業主婦世帯となり、基本的に消費は少なめに算出される可能性が高くなってきます。一方、小売業者のデータには、中国人の爆買い需要が加算されますから数字は伸びているわけです。

異なる店頭販売とネット通販の価格

 物価についても同じような議論があります。消費者物価指数の算定は、今のところ店頭での販売価格を基準としていますが、ネット通販の比率が上がっており、現実の物価と乖離が起こっているという指摘が相次ぎました。これを受けて、政府はネット通販を考慮した物価指数を作成する方針を打ち出しています。

 経済の実態に合わせて指標を変えていくことは重要ですが、一方で統計の連続性にも注意を払う必要があるでしょう。

 例えば、研究開発費のGDP算入については、一部から安倍政権が掲げるGDP600兆円の目標達成が容易になるという声が上がっています。しかし、研究開発費の計上によって実際の経済が変化するわけではなく、あくまで算定のルールが変わるだけですから、この数字が入ったことで経済が成長したことにはなりません。甘利経財相も述べているように、600兆円という目標は、新基準ではなく、従来基準で評価すべきです。

 また消費支出についても、日本国内の消費は弱いということを示す材料にもなります。統計はあくまでも統計ですから、それをどう使うのかは人間次第です。統計が持つ特徴をよく理解した上で、取捨選択するのが望ましいでしょう。

(The Capital Tribune Japan)

最終更新:2016/2/16(火) 2:34
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