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戦時の空気伝える「国策落語」 林家三平さんが七十余年ぶりに口演

2016/3/1(火) 21:17配信

BuzzFeed Japan

幻の国策落語「出征祝」。そのストーリーは……

2016年3月1日、東京都台東区西浅草。映画「サクラ花 桜花最期の特攻」の上映会。ホールから大きな拍手が起きた。

映画に出演する林家三平さんが出囃子にあわせて登場し、深々と頭をさげて、ある落語を演じる。戦意を高揚し、軍部と歩調を合わし、国民を戦争に協力させていくために作られたものだ。始まったのは70余年ぶりに演じられた国策落語「出征祝」。作者は1949年に亡くなった七代目林家正蔵。三平さんの祖父だ。
一冊の本がある。1941年に出版された落語集「名作落語三人選」だ。七代目林家正蔵など当時の人気落語家3人の名前で出版された。タイトルは普通だが、ページをめくると、「緊めろ銃後」「防空演習」「隣組の運動会」……。国民の戦意高揚のために作られた「国策落語」がずらりと並ぶ。

その中に「出征祝」がある。登場人物は落語でおなじみ、ケチな大旦那に、小言が多い番頭さん、怒られ役の丁稚小僧に若旦那。ストーリーはこんな調子だ。

ある日、若旦那に召集令状が届く。店中は大喜び。お祝いをしようと番頭さんは「お頭付き」の魚を用意したという。ところが並んだのはイワシの目刺し。あまりのケチっぷりに丁稚の小僧さんたちががっかりしたところに若旦那が帰ってくる。

落語の若旦那といえば、だいたいは世間しらずなおぼっちゃんで、遊び好きと相場が決まっているが、この話ではしっかり者だ。頭を丸めて、戦争にいく準備をしてきたという。小僧たちの話を聞き、番頭をしかりつける。

番頭も反論する。いわく、なるべく倹約して一銭の無駄もないようにしていたと。誤解されるなら、出て行ってもいい。

若旦那は、番頭の気持ちを試しただけだと言い、店のものに「遺言」を残す。番頭のいうことは自分がいうことと同じ。「戦死は覚悟だ。戦死と知らせがきたら、この家を整理してください。財産を整理して、それぞれ受け取って独立してほしい」。
そこに大旦那が帰り、息子が出征し、国のために役立てることが嬉しいと喜ぶ。大旦那もケチでついたあだ名はケチ兵衛に、にぎりや。「ところがけちん坊が役に立って国防献金ができる」という。ケチどころか、自身の財産で国に貢献する大旦那像が描かれる。

今夜は出征祝いだ、小僧たちも好きなものを食べようとなり、番頭さんに口々に好物をいう。話はここからオチに向かう。

「テキがいいな」
「ビフテキだね。けどテキはいけないね。贅沢はテキだと言うからね」
「トンカツは」
「トンカツはいいね。若旦那が出征してテキにカツだ」
「お酒は飲んでもいいですか」
「二合瓶を二本買ってある。うんと飲んでおくれ」
「若旦那は縁起がいいや」
「どうして」
「若旦那の出征祝いのお酒が二合瓶二本買ってあるんでしょう。二本買った(日本勝った)」

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最終更新:2016/3/1(火) 21:17
BuzzFeed Japan