ここから本文です

「善意だけでは解決しない」荻上チキさんの災害ボランティア論

2016/3/10(木) 6:00配信

BuzzFeed Japan

ボランティアなんていまでも必要なの?

まもなく東日本大震災から5年を迎える。あのとき、ボランティアに行った、行こうとと思った人は少なくないはず。ボランティアの数は減っているが、ニーズはまだまだ残っている。どんな支援がよくて、どんな支援がダメなのか。大災害とボランティア活動の教訓をまとめた『災害支援手帖』(木楽舎)を出版した評論家の荻上チキさんに聞いた。【石戸諭】

「神奈川から福島県南相馬小高地区に行きます。継続して、毎月一回を家屋の片づ け、家財の搬出、草刈などのお手伝いをさせて頂いています。 まだまだ、多くの方の力を必要としています」(NPO法人ボランティアインフォより)

2016年3月、東日本大震災から5年を前に、実際に募集されているボランティア情報だ。全国社会福祉協議会の統計(社協受付以外のNPOなどは含まれていない)によると、ボランティア数は震災直後の2011年5月を18万2400人をピークに激減し、今年2月は2800人となっている。一方で、ボランティアのニーズはなくなっていないことがわかる。

荻上チキさんはこう語る。

「東日本大震災からまもなく5年ですが、まだ様々なボランティアのニーズがあります。震災直後は多くの方が駆けつけました。でも、時間が経つにつれ、現地に行く人は減りました。『もう東北は復興したし、ボランティアなんて必要なの?』と思っている人も多いのではないでしょうか」

現実には復興はまだ途上だ。地域ごとにバラバラのニーズが存在している状態が続いている。震災5年は通過点でしかない。

「ニーズが減った面もありますが、ボランティア募集サイトでは、今でも多数の書き込みがあります。がれき処理など、震災直後のようなニーズが依然として残っている自治体もありますし、除草ボランティアや漁業支援などもあります。関心を持って『普通の支援』を続けるだけで、誰かの助けになれる状況が残っているのです」

この本の中で、荻上さんは具体的な事例をもとに、支援ノウハウの共有を目指した。なぜか。

「どのような支援が効果的だったのか。あるいは困ったのか。もう一度、可視化する必要があると思ったのです。キーワードは『善意は善行にならず』。よかれと思ってしたことでも、やり方を誤れば迷惑になることがあります」

「まずは、支援をしたいと思った対象のニーズを確認する。現地で活動している団体の情報発信を調べ、それを支援するのが妥当ですが、それすらできていないケースがあったのです」

荻上さんは被災地の自治体職員や、支援団体の証言を集めた。その中には、こんな話もあった。

震災直後の混乱が続いている最中に、「視察をさせてほしい」「支援をしたいから被災者を集めてほしい」などと被災地の自治体職員や支援団体に頼み込む。装備や泊まり先、交通手段の確保なども含めて、現地で迷惑をかけないことがボランティアの大原則だ。大きな災害が定期的に発生しながら、こんな基本すら共有されていない現状が浮かび上がってくる。 

「中途半端なまま現地に行っても、かえって邪魔になってしまう。ゴミ出しや、食料の確保なども含めて自己完結できないなら、行かなくてもできる支援を考えたらいいのです」

「僕が一番、最初に入ったのは東日本大震災の翌日、3月12日に起きた地震被害が甚大だった長野県栄村でした。津波災害、原発事故が注目された時期でしたが、栄村の地震被害も大きい。この様子をまとめて、ブログで発信すると『やっと栄村の被害が取り上げてられた』という声をもらいました」

「僕は災害支援の専門家ではないので、震災直接は何ができるかわからなかったし、迷いました。栄村にいってわかったのは、大きな災害になればなるほど、<発信される地区>と<発信されない地区>に差が出てくるということ。どんな小さな声でも情報発信をすることで、次の支援につなげることができます。ブログやツイッターで適切な情報発信をするというのもまた、支援なのです」

1/2ページ

最終更新:2016/3/10(木) 6:00
BuzzFeed Japan