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「善意だけでは解決しない」荻上チキさんの災害ボランティア論

2016/3/10(木) 6:00配信

BuzzFeed Japan

「現場の常識」は知られていない

支援物資を送ることも有効な支援策だが、方法を間違えると、ここでもかえって被災者を困らせる。


具体的な事例で考えてみよう。衣類が足りないという情報を目にして、服を送りたいと思ったとする。家の中でいらないものを整理する「ついでに」送るものを選び、婦人服、子供服、男性ものをまとめて、家庭にあるだけ送る。

これでは迷惑になる確率が高い、と荻上さんは指摘する

「理由は単純です。まず、なにもかも一緒に詰めて送ったら、現地で仕分けをするコストが発生します。最低限、子供は子供、大人ならサイズ別にまとめて送ることが大事です。また、忘れてほしくないのは『整理ついで』に送られてくるような着古されたもの、個性的なデザインのものは、被災者も着るのを避け、余ってしまうことが非常に多いことです。古いレースクイーンの衣装を送られて、何を考えているんだろう、という声もありました。これでは、『支援ゴミ』を増やして、余計な負担をかけてしまいます」

「ツイッターで流れたデマで、『【拡散希望】この自治体が支援物資を求めてます 住所は××』というものがありました。住所として書かれていたのは、被災した自治体です。被災自治体に直接、個人が物資を送ることは、仕分けのコストを増やすため推奨されません。実際、その自治体は、個人からの物資を受け入れていませんでした」

「ある音楽係者が人気バンドのTシャツを大量に送った結果、その避難所ではバンドTをみんなで着ることになったという話もありました。送られた人は笑いながら話してくれましたが、あまりに個性的な服が『かぶる』のは、恥ずかしいかもしれません」

ある自治体には「りんご3トン受け取って」という要望もきたという。大量に送ること=善意という気持ちはありがたいが、生鮮食品は腐りやすく、りんごを詰めるダンボールは金具で留められているため、カッターではあけにくい。仕分けの手間も増えるし、送られたところで、現地で無駄なコストを発生させる原因になってしまう。

「ニーズにあわないものを送るのではなく、食品なら、腐りやすいものは避ける。古着ならまとめて支援地でバザーをして、その売上を寄付するといった形での支援を考えるのもいいでしょう。優先すべきは送る側の都合ではない。まずは現地のニーズを把握することが大事だという教訓を導けます」

ボランティアとともに減っているのが、募金だ。募金本来の目的はお金で支援すること。もっとも身近で、手軽にできる支援のはずなのだが…。

「募金の集まりにもピークはあるのは仕方ないことではありますが、ボランティアと同じように、お金のニーズも5年が経ったからといって減るわけではないのです」

どのように募金先を選べばいいのだろうか。

「被災した人に届けたいのか、特定のプロジェクトを支援したいのかで、募金のやり方は変わります」
「前者なら、日本赤十字社への義援金は、時間こそかかりますが被災した人に直接、配られるのでおすすめできます」

「後者なら、本当は自分もやりたいと思っている活動を展開しているNPOなどに支援金を送るのがいいでしょう。自分の関心にあわせて、ひいきの団体を作るのがポイントです」

「一つの判断基準になるのは、活動実績とともに、受け取ったお金の使い道を公開しているかどうか。もらったお金の使い方を適切な方法で開示するということは、実務能力が高く、情報公開度にも積極的な団体だと判断できます」

「こうした団体に支援金を送ると、活動報告なども送られてきます。自分が寄付したお金がどう使われるかという楽しみができる。寄付も立派な支援なのです」

「災害支援手帖」を作る過程で、災害支援に関わるNPOや研究者から何度も聞いた言葉がある。「有効な物資の送り方や困った支援、ボランティアニーズの把握なんてことは、どこでも書いてあることだし、目新しくない」。

荻上さんは、この言葉に疑問を持っている。

「確かに専門家の間では『常識』かもしれないけど、素人の僕には目からウロコ、この震災で初めて知ったことも多かった」

「なぜ、東日本大震災で支援したい側と受け入れ側で、これだけミスマッチが発生したのか。現場の常識が社会の常識にまでなっていないことがあるからではないでしょうか。具体的な事例から、もっと教訓を共有する必要があります」

この本は、次の大災害が起こった時点で、ウェブ上に全文公開することが決まっている。

「とかく現場の声として語られがちなのは、専門家も驚く『すごい支援』。でも、それは誰もができることではない。この本に集められているのは、みんなができる『普通の支援』です。変わったことは書いていません」

「だからこそ、まだまだニーズが残っている東日本大震災の被災地でも実践できるし、確実にいつかは起こる次の大災害でもヒントになる。小さな実践の『まとめ』が、どこかで必ず役に立つと思います」

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最終更新:2016/3/10(木) 6:00
BuzzFeed Japan