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<レスリング>“無印”の井上が66kgで4つ目のリオ五輪切符を獲得!

2016/3/21(月) 6:00配信

THE PAGE

 レスリングのリオ五輪アジア予選の最終日が20日、カザフスタンで行われ、グレコローマン66kg級の井上智裕(28、三恵海運)が優勝。上位進出2か国の選手に与えられるリオ五輪出場権を獲得した。決勝は、ロンドン五輪60kg級金メダリストで一昨年の66kg級世界2位のノルージ(イラン)。世界選手権への出場歴もない井上には荷が重い相手かと思われたが、接戦を制し、井上にとって初の国際大会優勝をおさめた。井上が、そのままリオ五輪代表選手となる。

 表彰式を終えたあとで井上は「これまで五輪に出ることしか考えてきませんでしたが、今日、優勝できたことでメダルをとろうという気持ちになりました」と自信をのぞかせた。

 今大会前には、リオ五輪出場枠獲得は難しいとされていた“無印”レスラーだった。
 2012年のロンドン五輪が終わったあと、井上は、五輪を目指すレスラーとしては引退するはずだった。だが、運命とは皮肉なものだ。引退記念のつもりで出場した全日本で74kg級のチャンピオンになり、表彰台の一番上に立った。見晴らしのよい景色を体験すると、どうしても新たな欲が湧き上がる。「まだチャンスがあるのかな」。いったんあきらめた五輪への思いが、消せない気持ちに育ちつつあった。ところが、自分の気持ちを誰にも打ち明けられずにいた。

 冷静に自分の状況を考えると、リオ五輪に出たいとは言いづらい。長男の航平くんはまだ手がかかる年齢だ。もし五輪を目指すとなったら練習して強くなること以外のすべてを妻の裕美さんに任せきりになる。そんな虫がよいことをお願いしてよいものだろうか。誰にも何も言えずひとりで考え込んでいたところ、悩む夫の様子を察した妻の裕美さんに「レスリングは今しかできないんだから、やってみたら」と背中を押された。
   

「たくさん食べるのが好きで、とくに甘いものが好き。気を抜くとすぐに体重が増えてしまう僕のために、高タンパク低脂質低カロリー、たくさん食べても体重が増えにくい食事を工夫して作り続けてくれました。2人の子どもの育児もまかせきりだし、妻にはすごく感謝しています」

 食欲旺盛な井上のふだんの体重は74kg。少しでも気を抜くと76kgになる。男子選手の場合、減量幅は通常時体重の1割程度が目安。それを超えると体重が減りづらいため、普段の節制が肝心だ。66kg級で井上が力を発揮するためにと、裕美さんが工夫した料理のおかげで、最近は以前に比べて体重を落とせる体を維持できるようになってきた。2013年は71kg級、昨年は66kg級と階級を落としながら全日本を3連覇して、今回のリオ五輪アジア予選の代表に選ばれた

 元は高校教師。今の所属先が決まるまで、無職になったこともある。五輪を目指すためにと住み慣れた街を離れ、引っ越すことにもなった。一昨年には長女の花菜(はな)ちゃんが生まれ、ますます忙しい子育てもまかせきりだ。長男の幼稚園卒園式も、五輪アジア予選の試合当日と重なったため出席できなかった。寂しい思いをさせているはずなのに、子どもたちは無心に応援してくれる。昨夜も電話で航平くんから「がんばってこいよ」と明るく言われたことで嬉しくなり、余分な力がぬけたような気がした。

 ずっと課題だと言われてきたディフェンスが、2月末から目に見えて上達した。1試合目から決勝まで、失点を最小限に抑えた。

「イランの選手との試合の思い出といえば、16歳の時に出場した国際大会で好き放題に点をとられた思い出しかありませんでした。決勝で戦ったノルージ選手はとくに強い選手ですし、がぶって突き放す相手の得意な展開にのらないように気をつけました。結果、相手の形にさせなかった。これは自信になりました。課題はまだまだありますが、五輪でメダルをとれるように準備していきたいと思っています」
   

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最終更新:2016/3/21(月) 7:19
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