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生産性を向上させた炭素繊維の新製造プロセス 量産性と低コスト化を実証へ

2016/3/30(水) 16:32配信

THE PAGE

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 テニスラケットや釣竿などでおなじみの、軽くて強い材料「炭素繊維」。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が、従来の製造手法にメスを入れ、省エネで生産性の高い製造プロセスを産官学で共同開発した。今後は量産性と低コスト化などを実証する段階に入る。炭素繊維の生産力が向上し、いまよりも大量に供給されるようになれば、新エネルギーなど産業分野や航空宇宙分野などで一層採用が拡大すると予想される。近い将来、炭素繊維はより身近な存在となっているかもしれない。

日本の炭素繊維は世界生産シェアの約65%

 炭素繊維は、おもに有機繊維のポリアクリロニトリル(PAN)を高温で焼いて炭素を含む率を90%以上に高めた繊維のこと。古くは、発明王のトーマス・エジソンが、竹を焼いて作った炭素繊維を白熱灯のフィラメントに用いた。これが、炭素繊維の始まりだ。現在は、世界の炭素繊維生産量の約65%を日本の繊維メーカー3社で占める日本の得意分野だ。

 鉄よりも「軽くて強い」のが特徴。同じ体積あたりの質量は鉄の約1/4、強度は約10倍、硬さは約7倍。さびにくくて熱にも強く、導電性も有する。すでに、自動車の部材をはじめとする産業分野や、ロケットの機体を含む航空宇宙分野、スポーツ分野で使用されている。

生産性を向上させた新製造プロセス

 長年炭素繊維に関する研究にたずさわってきた東京大学大学院工学系研究科の影山和郎教授は、「従来の炭素繊維の製造プロセスは生産性が低く、コストがかかりエネルギー負荷も高い」と指摘する。これら課題を改善した新製造プロセスを開発すべく、NEDOは2011年、影山教授の研究グループと産業技術総合研究所、東レ、帝人、東邦テナックス、三菱レイヨンとともに共同研究を開始。影山教授は研究を統括する役割を担った。

 PANを原料に用いた現在の炭素繊維製造プロセスは、糸をつむぐ製糸工程と、熱して炭素繊維にする焼成工程に大きく分かれる。このうち、焼成工程は、(1)耐炎化、(2)炭化、(3)表面処理という流れ。このうち、(1)は、高温に耐えられるよう糸を低温(200~300℃)で加熱して酸化させる。この度の研究では、製糸工程の段階で熱への耐性を高める技術を開発し、約30~60分かかる(1)の工程が不要に。その分焼成工程の時間が短縮され、生産性の向上が可能になった。

(2)では、炉(温度は1000~2000℃)のなかに、酸化した糸を通す。これに対しては、マイクロ波で繊維を直接加熱して炭素化する技術を新たに開発。炉のように全体を加熱する必要がなくプロセス時間を短縮できるほか、消費エネルギー量を減らせる効果がある。

(3)は、他の材料と混ぜ合わせて複合材料を作る際に接着性を良くするための処理で、これについても液体が不要なドライプロセスの表面処理技術を開発。工程の簡略化の実現とともに乾燥工程も不要になり、消費エネルギー量は従来より半減可能。

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最終更新:2016/3/30(水) 17:25
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