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実燃費とカタログ燃費 「正義のアメリカと陰謀の日本」は正しいのか?

2016/7/3(日) 18:00配信

THE PAGE

「マイナス7度、129キロ」でテストする米国

 「そうは言ってもアメリカの燃費が感覚値に近いのは動かしがたい事実だ」と主張する人が予想される。そうした感覚値の是非については冒頭で説明した通りだが、百歩譲って、そういうものがあるとして、アメリカEPAのシミュレーションパターンはどうなっているかを見てみよう。

 まず冷間時始動における外気温設定はマイナス7度である。最高速は時速129キロ。しかも、そうやって得られた測定値にマイナスの補正係数をかけるという操作が行われている。もし、シミュレーションがある程度ポピュラーと考え得る運転状況の再現であるとするなら、異常な設定である。「自分の感覚値に近い」と言う人は毎日マイナス7度でエンジンを掛けているのだろうか? そして20分に一度程度の頻度で時速129キロを出すのだろうか?

 常識的に考えて、初めに答えありきの実験方法を組んだとしか考えられない。さらに、測定値に根拠不明の補正係数をかけてしまう。つまり燃費を特定の値にするための実験方法を恣意的に決めたということだ。これは科学に対する不誠実である。

 そんなことになったのは、EPAが「カタログ燃費と実燃費の乖離」を理由に消費者から訴訟を起こされたことが背景にあると考えられる。推測だが、この時の判例で、適正な燃費の水準が裁判で示された。つまり科学的にはともかく、“政治的な適正値”が不幸にも決まったのだろう。とすれば、あとはそれに従った数値が出そうなテストパターンと補正値を作るだけだ。それが仮にマイナス7度や、時速129キロという、それこそ例外のような運転パターンであったとしても政治的には正しいことになる。

 もし、カタログ燃費をユーザーが信じるべき数値としたいなら、そもそもシミュレーションという方法自体に問題があると筆者は考えている。自動車メーカーは厳しい競争の中にいる。公平を期すためにテストの運転パターンが開示されれば、メーカーは良い成績を出すための“お受験対策”を始めてしまう。それにより、テストの信頼性は損なわれる。いたちごっこだ。メーカーはそれが分かっていながら、クルマの販売がカタログ燃費に左右される以上、特定パターンに特化した馬鹿馬鹿しい燃費競争を止められない。エンジニアは下らないカタログ燃費競争に疲弊して行くのだ。リソースの無駄遣いだ。

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最終更新:2018/10/3(水) 15:44
THE PAGE

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