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盲導犬男性のホーム転落死 「右手で胴輪」が意味することは?

2016/9/16(金) 19:10配信

THE PAGE

社会への「要望」に終始

 塩屋隆男氏は、事故の16日後の8月31日に事故現場の銀座線・青山一丁目駅のホームを、歩行指導員(犬の訓練と使用希望者への指導を行う現場スタッフ)2名と共に視察した。

「そこは特別危険があるわけでもない、どこにでもあるごく普通のホームでした」

 その上で、塩屋氏はこう語る。「ホームドアや周囲の声掛けはあった方が良いに決まっています。しかし、世の中のすべてを安全柵で保護し、すべての場所に人の目があるなどということはありえません。なにより、ホームドアや声掛けが必ず必要ということであるのなら、視覚障害者の単独歩行を許してよいのかということになります」。

 社会のバリアフリー化、ノーマライゼーションが最終的に目指すところは、障害者自身の「自立」である。塩屋氏は、その一翼を担うアイメイト育成事業の責任者として、「ホームドアの設置」や「声掛けの推奨」といった社会への「要望」ばかりに終始する議論に警鐘を鳴らす。

 これまでに、複数の関係団体から事故を受けた声明が出ている。盲導犬普及を目指す特定非営利活動法人「全国盲導犬施設連合会」(11団体のうち、アイメイト協会、日本補助犬協会および全国盲導犬協会は非加盟)の声明文は、以下の4項目に取り組むというものであった。

(1)ホームドアの設置、点字ブロックの適切な敷設等、駅ホーム上の安全確保と安全点検を積極的に要請する。
(2)駅ホーム上で、盲導犬使用者・白杖使用者の危険な歩行を見かけた時に正しい声掛けができるよう積極的に啓発する。
(3)鉄道事業者及び社会に対し、視覚障がい者へ効果的に危険を知らせる方法について、講習会等を通じて積極的に啓発する。
(4)駅ホーム上の犬の訓練・盲導犬貸与希望者への歩行指導が、いつでも必要に応じてできるよう関係機関に要請する。

「左右」持ち替えを指導

 一見、まっとうな内容に見えるが、「自分たちの訓練ミスを棚上げし、鉄道側に要望を出すとは恥ずかしいにもほどがあります」と塩屋氏は喝破する。

 塩屋氏の言う「訓練ミス」とは、何なのか? 「ハーネスの左右持ち替えです。当協会をはじめ、世界中のほとんどの育成団体では左手持ち・キープレフト(左側通行)を遵守するよう指導しています。今回の駅ホームでは、品田さんは右手にハーネスを持ち、自分が線路側を歩き、犬がホーム中心側にいた(=右手持ち・左側通行)。この時点で既に危険きわまりない状態です」。

 北海道盲導犬協会では、「左右持ち替え」、つまり「両手持ち」をするよう指導している。これを積極的に行っているのは同協会を含め2団体。公益財団法人「日本盲導犬協会」では「原則は左手持ち」(個別の条件によっては限定的に右手持ちも可)としている。海外では「持ち替えを教えている団体は聞いたことがない」(塩屋氏)という。

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最終更新:2018/10/4(木) 11:09
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