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イグノーベル賞「股のぞき」研究に見る心理学の作法

2016/9/29(木) 20:35配信

THE PAGE

(2)適切な実験条件を選ぶ

 では、イグノーベル賞を受賞するような一見ヘンテコな研究が、なぜ心理学の分野から多く生まれるのでしょうか?

「股のぞきの研究もエレガントな手法ではありますが、心理学者にとってはそこまで滑稽だとは思いませんでした。心理学では、うまく実験条件を分離するために、ヘンテコな状況を作り出します。一般の方から見ると、実験光景がシュールに見えて、かつ本人が真面目に研究している様子が面白く見えるのかもしれませんね」

 股のぞきをするという行為も「体の姿勢が視覚にどのような影響を与えるのか」という純粋な興味で説明ができます。東山先生らがエレガントだったのは、「体の姿勢」と「視覚」をうまく分けて処理した点にあります。

 股のぞきという行為を
(a)体を曲げることで姿勢が変わる
(b)視野が上下反転する
と分けたことで、どちらが「大きさの恒常性」の変化に強く影響を与えるか調べることができました。たとえば、(a)の「姿勢」はそのままで、(b)の「視野」だけひっくり返ったときの影響を調べれば、「視野が上下反転する」ということが原因なのかはっきりします。

 東山先生らは、写真2のように逆さメガネを使って、視野だけ反転させたり、股のぞきをしているけど上下正しく見えたりする状況を作り出しました(※2) 。この実験光景はなかなかシュールですね。

 このように上手く実験条件を切り分けることで、東山先生らは「大きさの恒常性が崩れるのは、体の姿勢による部分が大きい」ということを実証できました。

(3)調べたい実験条件以外をすべてそろえる

 股のぞきによって大きさの恒常性が崩れるのは、足が視野に入ることや、目の高さのせいかもしれません。

 「だからこそ、心理学者は目的とする実験条件以外の要因をストイックなまでにそろえます」と田中先生。東山先生の研究でも、足が視野に入らないところまでしっかりと体を曲げさせたり、目の高さをそろえるために、股のぞきをしないグループにも腹ばいにさせたりするなど、徹底的に実験条件以外の要因がそろえられています。

 「同じ実験系で同じ被験者が実験をやると同じ結果が出る、という再現性が重要です」と田中先生はいいます。調べたい実験条件以外にも実験全体にわたって繊細な気配りが必要なのですね。

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最終更新:2016/9/29(木) 20:35
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