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37億年前-世界最古記録の生物化石「ストロマトライト」の発見(下)

2016/10/23(日) 11:00配信

THE PAGE

 地球は46億年前に誕生したといわれています。そして生命は約40億年前に生まれ、わたしたちホモ・サピエンスの種が初めて現れたのは、およそ20万年前。地球の長い歴史を1年に置き換えた場合、人類は12月31日午後11時半過ぎにようやく出現したと例えられるほど、わたしたち人間の歩みは実は、とても短いものです。

北米アラバマより“生物40億年のメッセージ”

 人類出現まで、地球はどのように環境を変え、生き物はどのように進化してきたのか―。古生物学者の池尻武仁博士(米国アラバマ自然史博物館客員研究員・アラバマ大地質科学部講師)が、世界の最新化石研究について報告します。


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 前回の「37億年前-世界最古記録の生物化石「ストロマトライト」の発見(上)」についてもう少し話をすすめてみたい。

 世界最古の生物化石記録という触れ込みの今回の発見と研究だが、
(オリジナルの論文(http://www.nature.com/nature/journal/v537/n7621/full/nature19355.html))


私の知る限り周りの古生物学者や地質学者達にとって幾つか反論の余地があるようだ。その主なものとして例のストロマトライト状の構造物が「当時の海の堆積層から直接形成されたもの」という意見がある。ただの堆積岩で生物の化石ではないというわけだ。

 また37億年前という年代だが、それまでに知られていたストロマトライトの化石記録と比べてみて地質年代的に「古すぎる」というクレームもあるかもしれない。しかし幾多の批判やクレームは(経験をつんだ研究者であれば)あらかじめある程度予測することができるものだ。そのための準備は研究者にとって腕のみせどころ、アイデアの絞りどころとなる。

 今回の研究チームは主に二つのテクニック―SEM(Scanning Electron Microscope)という特殊な電子顕微鏡と希土類元素(きどるいげんそ:Rare Earth Elements)という特殊な化学物質の分析法―を使い、ストロマトライトの判定に関するサイエンス的な証拠として提出している。

 SEMは非常に詳細な層構造の形態を直接我々に見せてくれる。希土類元素分析はただの岩石ではなく、太古の生物の痕跡を残していると、今回の研究チームは結論付けている。私見を述べさせていただくと、ストロマトライトとしてはっきり判定を下すには、もう少し更なる研究が必要かもしれない――例えば新たな化石標本の研究や上の二つとは違った技術を用いた分析法などだ。ただ37億年前の地層からストロマトライトが見つかっても「おかしくはない」と個人的に感じている。

 さて今回の世界最古の化石記録から、何か重要で興味深いメッセージを読み取ることはできないだろうか?まずそれまでに最古の生物化石と広く認められていたオーストラリアのPrimaevifilum(Schopf & Parker, 1987)などより、今回発見されたものはさらに3.5億年くらい古いと推定されている事実があげられる(図1参照)。

 一化石研究者から言わせてもらうと、「最古の化石」に基づく研究はそれだけで重要といえる。例えば最古の恐竜、最古の昆虫、最古の陸生植物など、数えだすときりがない。それぞれの生物グループの起源を知ることは、後の多様性の謎を解き明かす上で、何かしらヒントのようなモノを与えてくれる可能性がある。そのため「最古の○×△■」とは化石にもとづく生物進化の研究において永遠のテーマの一つといえる。

 しかし今回の発見にも見られるように「最古のモノ」に近づくほど、その化石の正体には大きな「?」(クエスチョン・マーク)がつきまとうようだ。そのため研究者は先述したように最新のテクノロジーやアイデアなど用いて、懸命により確かな証拠を探し求める。

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最終更新:2016/10/27(木) 10:27
THE PAGE