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「太陽光関連事業者」の倒産が過去最多ペース

東京商工リサーチ 2016/10/31(月) 13:00配信

2016年1-9月の「太陽光関連事業者」倒産状況

 2016年1-9月の太陽光関連事業者の倒産は42件(前年同期比10.5%増)に達した。このままのペースで推移すると、年間最多の2015年の54件を上回り、調査を開始した2000年以降で最多を記録する勢いで推移している。
 太陽光関連事業は2012年7月に再生可能エネルギー(太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス)の固定価格買い取り制度(FIT)が導入され、これを契機に業態転換や法人設立が相次ぎ、多くの事業者が参入してきた。だが、買い取り価格の段階的な引き下げで市場拡大のペースが鈍化したほか、事業者の乱立などで競争が激化し事業が立ち行かなくなる業者が続出。成長が見込まれた有望市場から一転し、2015年を境に倒産が急増している。
※ ソーラーシステム装置の製造、卸売、小売を手がける企業、同システム設置工事、コンサルティング、太陽光発電による売買電事業等を展開する企業(主業・従業問わず)を「太陽光関連事業者」と定義し、集計した。

倒産件数 過去最多ペースで推移
 調査を開始した2000年以降、年間倒産の最多は2015年の54件だった。同年の1-9月の累計倒産は38件だったが、2016年同期はすでに42件に達し、過去最多記録を塗り替えるペースで推移している。 
 2016年1-9月の負債総額は185億200万円(前年同期比10.9%増)だった。年間での負債総額の最多は2015年(1-12月)の213億5,500万円だったが、このままのペースで推移すると件数、負債ともに過去最多となる可能性がある。

負債額別 1千万円以上5千万円未満が3割増
 負債額別では、1億円以上5億円未満が最多で18件(構成比42.8%)だった。次いで、1千万円以上5千万円未満が13件(同30.9%)、5千万円以上1億円未満が7件(同16.6%)と続く。
 2016年1-9月に発生した全業種の企業倒産6,360件では、1千万円以上5千万円未満が最も多く構成比で54.3%(3,458件)を占めた。太陽光関連事業者は、設備等への先行投資もあるため全業種より負債規模が大型化している。
 ただ、前年同期比では、1千万円以上5千万円未満の増加率が30.0%(10→13件)と高水準で、太陽光関連市場の苦境が企業規模の大小を問わず影響を与え始めている。

原因別 「事業上の失敗」が全業種平均よりも高水準
 原因別では、「販売不振」が最も多く21件(構成比50.0%)と半数を占めた。次いで、「事業上の失敗」8件(同19.0%)、「運転資金の欠乏」6件(同14.2%)と続く。
 2016年1-9月に発生した全業種の企業倒産6,360件のうち、「事業上の失敗」の構成比は4.6%(295件)で、太陽光関連事業者の「事業上の失敗」が突出している。成長市場として規模拡大が見込まれていただけに、実現性を欠いた安易な事業計画で参入したり、過小資本で参入したが業績の見込み違いから倒産するケースや、想定よりも市場規模が拡大せず思い描いた受注を獲得できず行き詰まるケースが多いことを示している。
 また、全業種の企業倒産6,360件のうち、「過少資本」の構成比5.3%(338件)に対し、太陽光関連事業者は16.7%(7件)と3倍の構成比になっている。同業他社との競合で低採算に陥って財務基盤の強化が遅れたり、営業活動で十分なキャッシュフローを創出できず行き詰まるケースなどが確認されており、他業界よりも厳しい競争環境にさらされている。

【2016年1-9月「太陽光関連事業者」の倒産、主な事例】
日本ロジテック(協)(TSR企業コード:298943107、東京都、負債額約120億円)
 共同流通センターを運営していたが、特定規模電気事業者の認可を受けて2010年4月に電力小売事業に参入した。2012年の再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度開始で、電力小売事業が伸張。2012年3月期に4億2,600万円だった売上高は、2015年3月期は売上高555億7,700万円へ急拡大した。だが、自前の発電所を持たず、電力会社や自治体等から太陽光発電を含む余剰電力を購入し、安価に再販売する形態で利幅が薄く、電力需給の逼迫によるインバランス・ペナルティーもあって資金繰りが悪化。2016年3月に再度の資金ショートを起こし、2016年4月に東京地裁より破産開始決定を受けた。

太陽エナジー販売(株)(TSR企業コード:350800561、神奈川県、負債額1億4,600万円)
 1997年設立の太陽光システム販売、設置工事業者。2012年7月のFIT導入で業容は拡大し、2013年9月期に1億9,756万円であった売上高は2015年9月期には6億107万円へ伸長した。しかし、既往より採算面に課題を抱え赤字計上を散発し、2015年9月期は同業者の乱立に伴う価格競争の激化から6,477万円の当期純損失を計上。2015年9月に本社を移転、10月に人員削減を行うなどリストラ策を推し進めた結果、最終的に営業担当者は代表1名となっていた。法人向け大型案件の獲得に注力する営業戦略へ転換したが、期待していた案件を獲得出来ず、2016年6月に横浜地裁より破産開始決定を受けた。

(株)サン・エコイング(TSR企業コード:571710468 、兵庫県、負債額1億1,300万円)
 太陽光システムの販売施工を中心にオール電化システム、リフォーム工事などを手掛け、主に一般家庭向けに営業を展開。FITの導入を追い風に業容を拡大し、2013年12月期は売上高約2億1,000万円を計上した。しかし、太陽光発電ブームの環境下で同業他社との競争が激化。また、買取価格が年々引き下げられるなかで受注は減少し、2015年12月期の売上高は約1億円へ落ち込んだ。利益面も低調で当期純損失を散発し2016年6月末に事業を停止。9月に神戸地裁尼崎支部より破産開始決定を受けた。

 2011年3月の東日本大震災後、電気料金の高騰や2012年7月の再生可能エネルギー固定価格買い取り制度(FIT)が導入されたことから、太陽光発電に注目が集まった。政府も自給エネルギーの確保と低炭素社会の実現に向け、化石燃料や原子力に依存し過ぎないエネルギーミックスを推し進めてきた。
 FIT導入当初、太陽光発電は他の再生可能エネギーより買い取り価格が優遇され、計画から稼働まで短期間で済むため、メガソーラーの運営やソーラーシステム装置の販売、設置工事など多様な形態で参入が相次いだ。だが、段階的な買い取り価格引き下げや同業者の増加で太陽光バブルは終焉を迎え、淘汰の時代に入っている。
 2016年5月25日に成立した改正再生可能エネルギー特措法では、事業用の太陽光発電について2017年4月以降に入札制度を導入する方針が打ち出された。経済産業省は、2017年10月を目途に最初の入札を実施する方向で調整を進めており、「事業用」に関連した太陽光関連事業者の収益環境は、今後悪化する可能性も出てきた。
 また、住宅用太陽光発電システムの初期コストは、諸外国と比べ高水準との見方もある。2016年10月24日に開催された「調達価格等算定委員会」では、太陽光発電先進国のドイツと比較すると、日本は「設置費用」で2.7倍、システム全体では1.6倍コストが高い水準にあるとの資料が提示された。日本とドイツは屋根構造などの住宅環境や、太陽光発電事業の成り立ちが違うため単純比較は難しいが、今後、住宅用太陽光の買い取り価格の議論への波及も想定される。現在より買い取り価格が引き下げられた場合、太陽光パネルの設置工事業者やシステム販売業者の受注単価に影響を及ぼしかねない。
 「再生可能エネルギーの導入促進」と「賦課金の抑制による国民負担の低減」のはざまで経営難に陥った太陽光関連事業者への対応も必要になるかも知れない。また、太陽光関連事業者側も、独自での体質強化が難しい場合、事業統合やM&Aなどによる規模拡大で経営効率の改善を推し進める必要も出てくるだろう。市場の急激な変化の中で、波に乗り切れない中小規模の太陽光関連事業者の淘汰は、しばらく続く可能性が高い。

東京商工リサーチ

最終更新:2016/11/4(金) 11:51

東京商工リサーチ

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