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相場の神髄は順応する「智」、逆行する「勇」、待つ「仁」 牛田権三郎(下)

2016/11/11(金) 17:26配信 有料

THE PAGE

 元祖、「相場の大神様」と呼ばれる本間宗久と同じく江戸時代に活躍した牛田権三郎。牛田に関する文献は少ないものの、コメの最強相場師としての理念を知る手掛かりとなるのが著作の『三猿金泉録』です。この著作はのちに現代語訳され、後世に読み継がれています。コメなどの農作物は天候などに左右されやすく、相場を読むのが難しいと言われますが、牛田は著作の中で相場師としての心得を記しています。また、その極意を短歌にも詠いました。

 牛田の人物像については依然謎のベールにつつまれていますが、著作から相場哲学を市場経済研究所の鍋島高明さんが読み解きます。


  相場も然り 森羅万象の変化はすべて陰と陽との交替する宇宙の原理に基づく

 慈雲斉牛田権三郎は60年間にわたってコメ相場と親しんだのち『三猿金泉録』を残すが、その冒頭の緒言でこう記している。

 「大極動きて陽を生じ、動くこと極まりて静となり、静にして陰を生ず。静なること極まりてまた動く。一動一静、皆天地陰陽自然の理なり。コメの高下も天地陰陽の回るが如く、強気の功現れてはなはだ高くなり、上がる理極まれば、その中に弱気の理含む。弱気の功現れてはなはだ安くなれば、そのうちに強気の理を含む。万人の気弱き時は、米上がるべき理なり。諸人気強き時は、米下がるべき種なり。これ皆天性理外の理なり」

 太極とは、この広大無辺の宇宙を支配している神秘な力のことだが、太極が動き出すと陽気を発し、やがて動きが止まり陰気となる。この1つの動き、1つの静止は皆天然自然の道理に従う。1日の動静でいえば朝が来て、人は動き始め、真昼の太陽を浴びながらその動きは頂点に達し、やがて夕暮れが訪れ、動きは静止する。漆黒の闇に包まれると人は眠りにふける。

 季節でいえば陽春のあとには盛夏が待ち受け、秋冷ののち極寒の冬景色となる。コメ相場の世界もこうした自然の理によるものである。本間宗久の言葉に「相場は天性自然の理、算用は無用の事」とあるが、牛田も同じことを述べている。森羅万象の変化はすべて陰と陽との交替する宇宙の原理に基づいているというのだ。

 牛田はまた、「商い慎むべき次第」の項で米商い(相場)をなさんと思わば、大酒、淫事、盤上争い事などは堅く禁ずべし」とし、こう述べている。

 「陰極まって陽生ず。動かざるに至って大高下の端たるべし。商いの道は風波に渡海する思い、武士の戦場の向かう心をもって駆け引きすべきところ、違(たが)いて負けとて嘆き恐れず、驚かず、静かに思慮して、事を遅なわるべからず。古人の碁を打つに勝たんと打たず、負けじと打つべしという心をもって、心身堅固、勇猛の了簡易をもって商いに掛かるべし。勇猛の心なくんば、この商いは堅くすべからず。一に胆、二に運と諺にいうなり」本文:2,236文字 この記事の続きをお読みいただくには、THE PAGE プラスの購入が必要です。

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最終更新:12/6(水) 11:20
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