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トランプ外交を読み解く3つのキーワード「取引」「世論」「変化」

2016/11/14(月) 15:00配信

THE PAGE

 次の米大統領に選出されたドナルド・トランプ氏は、選挙期間中に在日米軍の撤退に言及するなど日米関係についても“型破り”な発言が目立ちました。トランプ氏はどのように外交を展開していくのか。オバマ政権が掲げたアジア重視の外交安保政策はどうなるのか。米国政治に詳しい上智大学の前嶋和弘教授に寄稿してもらいました。

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「内向き」か「強い米国」か

 トランプ新政権の外交・安全保障政策はどこに向かうのだろうか。特にアジア太平洋政策や日米同盟について考えてみたい。

 当選から間もない現在、トランプ外交の基本路線を読むのはなかなか難しい。「米墨国境の万里の長城建設」や「ムスリム入国禁止」といった選挙戦のハチャメチャな政策ともいえないような政策は目立ったものの、実現性を考えると、これは支持者を固めるためのスローガンといえるようなものかもしれない。外交は言葉のゲームでもあるため、そのことは問題だ。ただ、今回は「暴言」以外の部分で読み取れるトランプ外交の方向性を考えてみたい。

 具体的には次のような3つの傾向が高くなるかもしれない。

 第1点目はビジネスマンとしてのトランプの性格である。オバマ政権では、軍事力よりも話し合いを重視し、単独行動ではなく、多国間での協調主義を重視する傾向が続いた。トランプの場合、おそらくビジネスマンらしく2国間の協議をし、話し合いをまとめていく手法を進めるのが得意かもしれない。パリ協定やTPPに代表されるような多国間で物事を進めていくような枠組みではなく、できる限り相手と1対1で取引をし、最大限のメリットをアメリカにもたらせようとするような外交の方向性が予想される。オバマ政権ではスローガンのように何度も登場したが、結局大きくは進まなかった核軍縮もトランプ政権ではどうなるのか、不透明である。実利的な「ディール」(取引)がキーワードである。

 第2点目はポピュリストとして、外交・安全保障上の世論の影響が大きくなる可能性である。国民の間には、中東に介入に対して、極めて強い厭戦気分がまだ続いている。体力以上にイラク戦争や、アメリカの歴史上もっとも長い戦争となっているアフガニスタン戦争を進めた結果、アメリカの海外での威信の低下や、国力そのものの低下を招いたという意識がアメリカ国民には強い。この世論を背景に、「アメリカは世界の警察ではない」と繰り返し公言したオバマ大統領と同じ、あるいはそれ以上に、どちらかといえば内向き路線が目立つことになるかもしれない。ここでは「世論」がキーワードである。

 ただ、これまでの選挙戦でのトランプのアメリカの外交・安全保障に関連する発言は必ずしも「二国間」「内向き」とばかりは言えない。例えば、中東情勢、特に差し迫ったイスラム国への対応については、トランプはロシアを含む各国と協力し対応すると指摘してきた、ただ、予備選前の共和党立候補者の討論会では「イスラム国はじゅうたん爆撃する」と極めて、ユニラテラリズム(単独行動主義)を単純化した介入主義的な発言もトランプはしており、やはりまだ読みにくいのが現状だ。

 第3点目は、オバマ外交からの乖離の傾向である。政権交代で別の政党の大統領が就任すると前の大統領の路線を大きく変えるのが一般的である。オバマ外交は、ブッシュ政権1期目の力による外交や単独行動主義を大きく修正した。トランプ外交もおそらくオバマ政権の否定から始まる部分も大きい。その意味でオバマ政権のレガシーの一つであるイランとの核合意は大きく方向転換していくかもしれない。また、オバマ政権時代にこじれたイスラエルとの関係については修復が前提にあるのではないか。

 特に、オバマ政権時に対立が鮮明化したロシアとの関係については、一気に状況が変わり、米露が歩み寄り、イスラム国対策などに力を入れてくる可能性も高い。上述のようにトランプ政権もオバマ政権も「アメリカは世界の警察官ではない」という認識が根底にある。ただ、「偉大なアメリカをもう一度」という例のトランプの選挙スローガンを支持した層を意識して、場合によってオバマ政権以上は「力による外交」を躊躇しない可能性もあるだろう。いずれにしても「変化」がキーワードである。

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最終更新:2016/11/14(月) 19:37
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