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高齢ドライバー事故の背景に「生涯現役」の闇

2016/11/15(火) 11:33配信

BuzzFeed Japan

高齢ドライバーによる事故が相次いでいる。ここ3週間だけでも、報道によると計5人がはねられて死亡した。【BuzzFeed Japan / 小林明子】

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「どこを走ったか覚えていない」

横浜市で10月28日、集団登校していた小学生の列に軽トラックが突っ込み、1年生の男児が死亡した。逮捕された男(87)は「どこを走ったか覚えていない」と話した。事故前日から車で徘徊していたとみられる。

11月10日には84歳が、12日には83歳が、13日には82歳が、いずれも死亡事故を起こしている(=年齢はすべて事故当時)。

こうした事故を受け、政府は対策を検討。来年3月からは、75歳以上の免許更新時の認知機能検査で医師の診断を義務づける。警察庁は運転免許の返納を促しているが、2015年に自主返納した65歳以上は27万人で、前年末の免許保有者の2.5%だ。

「私はまだ若い」「俺だけは大丈夫」

「『生涯現役』という言葉がある限り、免許の自主返納は進まないでしょう」

こう話すのは、高齢者の取材を続けているノンフィクション作家の新郷由起さん(49)だ。著書『老人たちの裏社会』では、「生きる喜び」を見出すために万引きやストーカーなどの犯罪に手を染める高齢者の実態を書いた。

免許返納には、高齢者の「生活の足」を奪うという深刻な社会問題が立ちはだかる。新郷さんはそれに加え、「生涯現役」という意識が返納を躊躇させる、と指摘する。

「私はまだ若い、俺だけは大丈夫。そう話す高齢者がとても多い。運転するのは、近所のスーパー、郵便局、入浴施設、病院の4カ所に行くときだけで、慣れている道だから事故を起こすはずがない、と慢心しています」

こんな調査もある。立正大学の所正文教授(心理学)が「事故を回避する自信があるか」と年代別に尋ねたところ、「60代」を超えると「自信がある」と答える人の割合が増え、「75歳以上」では全年代最多の53%にのぼっていた。

高齢者はなぜ、自分の能力を「過信」してしまうのか。新郷さんはこう考える。

「長く生きてきたからこそ、自分の技能と判断力に自信がある。また、たいていの場合、本人が自覚している”老い”と実際の衰えには相応のギャップがあるものです」

新郷さんは、高齢者の「ハート年齢」と「現実年齢」の「8掛け説」を唱える。

「現代シニアは総じて気が若く、80歳の男性に、80歳だとして話しかけると、かみ合わない。64歳だと想定して話すと、相手も喜ぶし話が通じやすいのです」

「さらに、今の高齢世代は、高度経済成長期に働き盛りだった世代。今日よりも明日、明日よりもあさってがよくなる右肩上がりの暮らしが当たり前だったため、体力や判断能力が衰えていく自分を受け入れがたい。特に、成長のアイコンであるクルマを手放すことは、『生活の足を失う』という物理的な変化だけでなく、心理的ダメージも大きいのです」

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最終更新:2016/11/15(火) 11:33
BuzzFeed Japan

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