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太陽系大航海時代の「帆船」とは何か ── JAXA森治助教インタビュー

2016/12/5(月) 13:00配信

THE PAGE

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 月を超えて火星、さらにはその先へ ── わたしたち人類は、一体、宇宙のどこまで行けるのだろう。2020年代に打ち上げを目指す、宇宙で帆を広げ、光で推進力を得る宇宙船「ソーラー電力セイル探査機」の開発が進んでいる。月のはるか遠く、木星付近のトロヤ群小惑星への探査に取り組む計画だ。JAXA宇宙科学研究所 宇宙飛翔工学研究系の森治助教に話を聞いた。

 ソーラーセイルの原理は、太陽の光を反射させて、その際の反力を受けて進む、というシンプルなものです。光には質量がありませんが、運動量やエネルギーは持っており、それらがあれば押す力が出てくるのです。こうした押す力を光圧とも言います。

 その力は一体どのくらいなのか。「IKAROS」を例にとると、大きさ14m四方で面積200平方メートルのセイルが太陽光から受ける力は約0.1g重。1円玉の1/10の重さほどの小さな力なので、人間も日々さまざまな光源から光圧を受けていますが、弱すぎて感じられません。
 
 でも、宇宙を航行するならそれでも十分活用可能です。昼夜の区別なく太陽光を受けられるほか、宇宙空間には空気抵抗がなく加速すれば速度は失われませんので、速度は上がり続けます。ソーラーセイルは、人類が手にできるもっとも速い乗り物ではないかと言われているのです。

 セイルの材料として採用したのは、紫外線や放射線に強い耐性を持つポリイミドです。厚さは7.5μmで、太陽光を反射させるため、片面にアルミニウムを蒸着しています。われわれは、このソーラーセイルに薄膜太陽電池を貼り付けることで新たにソーラー電力セイルというアイデアを生み出しました。これに最初に挑んだのがIKAROSです。

 2010年に打ち上げられたIKAROSのミッションのなかでも一番の難点だったのが、宇宙空間でセイルを展開し、張り続ける技術の確立です。どのような方法でセイルを折りたためば良いのかをはじめ、さまざまな課題を折り紙を使って検討しました。真空槽での落下実験などを経て、失敗しにくくかつ簡単に展開できる方法を約6年かけて探った結果、IKAROS本番では見事セイルを展開できました。
 
 このほか、セイルに貼り付けた薄膜太陽電池での発電、ソーラーセイルによる加速、セイルの操舵による軌道制御といった他のミッションも成功を収め、世界で初めてソーラーセイルとソーラー電力セイルが実証されたのです。

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最終更新:2016/12/6(火) 12:23
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