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入所35年男性の遺産、施設へ 世話は近親者以上、特別縁故者認定

福井新聞ONLINE 2016/12/3(土) 12:36配信

 35年間にわたり入所し、2015年に死亡した身寄りのない男性の世話を続けてきた福井県勝山市の障害者支援施設に対し、名古屋高裁金沢支部(内藤正之裁判長)は2日までに、施設を特別縁故者として認定し「(男性の)相続財産すべてを分与する」とした。職員らが男性と築いた関係や世話を「近親者に匹敵、またはそれ以上」と判断した。男性の相続財産管理人を務める弁護士によると、世話をした施設を特別縁故者として裁判所が認めた例は全国的にも少ないという。

 申し立てていたのは、障害者支援施設「九頭竜ワークショップ」を運営する社会福祉法人九頭竜厚生事業団。男性は1980年に同施設に入所。知的・身体障害があり職員らとの意思疎通も困難で、15年2月に68歳で死亡した。

 男性には相続人がおらず、男性の相続財産管理人を務めた佐藤辰弥弁護士の助言で、16年7月同事業団は特別縁故者としての認定を福井家裁に申し立てた。同家裁では「療養看護が施設と利用者の関係を超える特別なものではなかった」などとして、同年9月に却下され、同事業団は名古屋高裁金沢支部に即時抗告していた。

 11月28日に出された同支部の決定では「施設職員は男性と地道に信頼関係を築き、食事や排せつなど日常的介護のほか、娯楽にも参加できるよう配慮。昼夜を問わず頻発するてんかんの発作にも対応していた」などと、職員の証言資料などを基に判断。「長年、男性が快適に暮らせるよう献身的な介護を続けていた。通常期待されるサービスの程度を超え、近親者の行う世話に匹敵する」「男性が預金を蓄えることができたのは、施設利用料の安さが大きく寄与している」などと認定、施設を特別縁故者として、財産約2200万円を分与するべきと判断した。

 九頭竜ワークショップの牧野敏孝副所長は「男性にとって施設は家庭で、職員は家族だった。決定は、介護職を目指す人の励みにもなる。男性の遺志にかなうよう、財産はほかの入所者のための施設向上に活用したい」と話している。

 相続財産管財人の佐藤辰弥弁護士によると、施設に分与された例は全国で数例しかなく「善意で介護をする人や施設にとって、今後の支えになる意義ある決定」としている。

 【特別縁故者】 相続人のいないまま死亡した場合、生計を同じくしていたり、療養看護をした人や団体等を、家庭裁判所が特別の縁故関係にあったと認定すると、特別縁故者となる。認定されれば相続財産の分与を受けられる(民法958条の3)。相続に至らなければ、相続財産は国のものになる(同959条)

最終更新:2016/12/3(土) 14:15

福井新聞ONLINE