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アベノミクスの提唱者・浜田宏一氏が自説の誤りを認めたって本当?

2016/12/5(月) 8:00配信

THE PAGE

 世界的な経済学者として知られ、安倍首相の経済ブレーンでもある浜田宏一内閣官房参与の発言が話題になっています。自ら提唱した金融政策の誤りを認めたという話なのですが、果たしてこれは本当なのでしょうか。

元ネタは日経新聞のインタビュー記事

 浜田氏が誤りを認めたとされているのは、日本経済新聞に掲載されたインタビュー記事です。その中で浜田氏は「デフレ脱却には金融政策だけでは不十分だったのか」という記者の質問に対して、「私がかつて『デフレはマネタリーな現象だ』と主張していたのは事実で、学者として以前言っていたことと考えが変わったことは認めなければならない」と述べ、以前とは考え方が変わったことを認めました。

 「デフレがマネタリーな現象だ」というのは、貨幣数量説的なデフレ解釈のことを指していると思われます。貨幣数量説とは、物価全体の水準は貨幣の総量で決まるという経済学説で、浜田氏をはじめとする、量的緩和策の推進者のほとんどが、この立場に立っています。

 浜田氏は、日銀が2%の物価目標をなかなか実現できないことについて、原油価格の下落や消費増税などの影響が大きいと説明しています。これは日銀の黒田総裁の説明ともほぼ合致するのですが、デフレが100%貨幣現象なのだとすると、個別の財(モノ)の価格変動で全体の物価が動くことはあり得ませんから、確かに以前の発言と矛盾する部分があったとみて差し支えないでしょう。つまり、物価を動かす要因は貨幣の量だけではなかったという点について浜田氏は自ら誤りを認めたことになります。

浜田氏がアベノミクスの誤りを認めたというには無理がある

 しかしながら、この発言ひとつで、浜田氏が量的緩和策やアベノミクス全体の誤りを認めたと解釈するのはかなり無理があります。浜田氏は、減税などを組み合わせた政策パッケージの提供が有効であるとも発言しており、量的緩和策をより効果的なものにするためには、総合的な政策が必要という認識のようです。

 アベノミクスも当初は、金融政策、財政政策、構造改革の3つをセットにした政策パッケージでした。しかし、利害関係の調整ができず、結果的に金融政策一本に追い込まれてしまったという面があることは否定できません。また、これと前後して、リフレ派と呼ばれる専門家の中には、金融政策だけですべてを解決できるかのような説明をした人もいます。金融政策さえ実行されれば景気は回復すると思った国民も多かったでしょうから、浜田氏の発言が極端に捉えられてしまうこともある程度はやむを得ないかもしれません。

 経済の専門家の中には、建設的な議論を好まず、相手を批判したり、罵倒してばかりという人が多いのですが、これは自然科学など他の学術分野ではあまり見られない光景です。浜田氏が金融政策の誤りを認めたのかどうかということも重要ですが、物価目標の達成が難しくなった今、現実にどのような政策を実行するのがよいのか、専門家の人たちにはもっと前向きな議論をして欲しいものです。

(The Capital Tribune Japan)

最終更新:2016/12/5(月) 8:00
THE PAGE