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“絶滅楽器“のハーモニカを救いたい「そうだ 京都、行こう」CMで演奏する南里沙の思い

2016/12/4(日) 10:38配信

BuzzFeed Japan

美しい京都の景色とともに、アレンジされた「My Favorite Things」がBGMで流れる、JR東海のCM「そうだ 京都、行こう」。1993年から質の高い映像で古都の魅力を伝え続け、ファンの多いCMだ。
【BuzzFeed Japan / 徳重辰典】


2016年秋のCMでは、世界遺産にも指定されている天龍寺の紅葉とともに、哀愁を感じさせる管楽器の調べが流れる。

懐かしいようで初めて聞く音の正体はクロマチックハーモニカ。演奏するのはプロ奏者の南里沙さんだ。

クロマチックとは「半音」との意味で、ハーモニカの右側につくスライドボタンを押すとシャープやフラットといった半音が出る。

100年以上の歴史をもちながら、日本ではあまり知られていない楽器だ。

「中国、マレーシア、インドネシア、韓国、台湾…。日本以外のアジア圏では盛んです。台湾で行われたアジア大会に審査員で行くと3000人くらいが集まっていました」(南さん)

会場を訪れた人の中には、南さんの演奏をYouTubeで見てハーモニカを始めたという子供もいた。

「けっこう私、向こうでは人気者なんですよ。日本ではないキャーッという歓声もいただけます(笑)」

ハーモニカはいまや“絶滅楽器“

南さんはもともとオーボエ奏者。中学生から始め、神戸女学院大学でもオーボエを専攻した。

大学3年の春、オーボエと同じリード楽器と知り、興味を持ったのがクロマチックハーモニカだった。

「どこか人の心に寄り添える音色で、サックスやオーボエの音、人の歌声のようにも聞こえる。懐かしさと新しさを奏でられ、自分の心を表現しやすい楽器だと思いました」

大学には講師がいないため、大阪の講師の元に通い、在学中はハーモニカとオーボエを両立した。

卒業のタイミングで「どちらも奥が深く、片手間にできる楽器ではない」と考え、長年親しんだオーボエではなくハーモニカを選んだ。

“絶滅楽器“となっているハーモニカを救いたいという思いがあった。

「ハーモニカは、今の35歳くらいから授業で教える学校が少なくなっているんです。代わりに鍵盤ハーモニカやリコーダーが増えています。鑑賞会をすると、ハーモニカを知らない子供も多い。こんなに魅力的な楽器を絶滅させてはいけない。私が吹くことで注目してもらい楽器の魅力が広まればと思いました」

演奏する曲はクラシックから童謡唱歌、ジャズ、演歌までと幅広い。ハーモニカを吹くことで音楽のジャンルの壁がなくなる。

2015年に発売されたアルバム「El Mundo」に収録された12曲のジャンルも多彩だ。

「ビルボードライブ大阪でのコンサートで、12月に演歌歌手の神野美伽さんの新歌舞伎座公演に出るよと言ったら『わー』という歓声じゃなく『えーっ』というどよめきが起こりました(笑)。ファンの方も幅の広い南里沙を楽しんでもらっていると思います」

プロとしての活躍が目に留まり、JR東海のCMのオファーがやってきた南さんだが、このCMになじみはなかった。

「私は兵庫に住んでいたんですが、関西ではCMが流れていないんですよ。兵庫だと『そうだ、京都へ行こう』といって、本当にすぐ行けちゃう(笑)。音楽活動を始めて東京のホテルで見て、初めてこんな素敵なCMがあるんだって知りました」

CMでは、ハーモニカの良さを前面に出してほしいと言われ、自由に弾いた。30秒という短い時間の中に、ハーモニカの魅力は全部詰められたと感じている。

人気CMだけに、反響は大きい。

「この楽器はなんだろうと、私のホームページに来てくださる方や『ハーモニカを買いました』という方もいました。演奏だけで私だと分かる方もいたので、南里沙の音が少しずつ広まっているんだと感じました」

ウクライナ、ブルガリア、ドイツ、中国、トルコ、台湾、マレーシア、シンガポール...。演奏場所は日本国内に留まらず、来年4月にはカナダでの演奏も決まっている。

クロマチックハーモニカを広め、いつか日本の若い世代がやりたいと思える楽器にしていきたいという南さん。

これからもハーモニカと一緒に旅をし、世界中に南里沙の音を広めていく。

最終更新:2016/12/4(日) 11:10
BuzzFeed Japan