ここから本文です

ボブ・ディランの詩はなにがすごいのか?それは決めつけから自由になる言葉

2016/12/11(日) 6:10配信

BuzzFeed Japan

ノーベル賞の授賞式が終わった。その場にいなかったとはいえ、もっとも注目されたのは、やはりノーベル文学賞を授賞したミュージシャン、ボブ・ディランだ。難解だ、と言われるディランの詩は何がすごいのか?ディランの言葉が持っている力を、英米詩の専門家、東京大学の阿部公彦准教授と読み解く。【BuzzFeed / 石戸諭】

時代を何度も変えてきたボブ・ディラン 本当のかっこよさがわかる15枚

その詩に意味はあるのか?

「歌詞がどういうものかは、他の人が決めるのに任せるよ。(中略)私にはそうしたことを語る資格がない。意見などないんだよ」(「ロッキングオン」2017年1月号より)

今年のノーベル文学賞を受賞したボブ・ディランが受賞後、初めて歌詞について言及したインタビューだ。ディランは歌詞についてこうだ、と決められることをどこまでも拒絶する。

「その気持ちはわかります。詩の意味を聞かれるのがうっとうしいのではないのでしょうか。ディランの詩は主張をそこに込めるというより、こうだと決めつけられることから逃げるように、言葉を広げているところに面白さがある」

そう語るのは気鋭の英米詩研究者、東京大学の阿部公彦准教授だ。「英詩のわかり方」などの著作がある阿部さんと一緒にディランの詩を読みながら、その世界に浸ってみよう。

実は英詩の伝統を踏まえているディラン

阿部さん曰く、ディランの詩には英米詩の伝統が見え隠れしている。古くから語り継がれて来た民衆詩(バラッド)からの影響、過去のテキストのプロットを使う、一定のルールのなかで韻を踏むといったように。

まずは代表曲にして、ロックの歴史上もっとも有名な1曲「Like A Rolling Stone」を読んでみよう。詩はこんな一節から始まる。

Once upon a time you dressed so fine
You threw the bums a dime in your prime, didn’t you?
(昔、あんたはいい服をきて、いちばん良かった時だ、浮浪者たちに小銭を放っていたね。そうじゃなかったかい?)

メロディーに対して、ちょっと字余りじゃないかと思わせるくらいたたみかけるように言葉がでてくる。

「この詩の特徴は『You』が多くつかわれていることなんです。これは英詩でもよくみられる語りのパターンの一つで『あなたは~だ』と何度も繰り返す事を詩の原動力にしているもの。ディランは言葉をたくさん使うことで、あなたに対して語りたい事が多くある、という印象を持たせています」

そこで描かれるのは没落した女性だ。これは英米小説で何度も語られてきた「女性の没落」というテーマに通じる。

「You=かつての栄光から没落していく女性」を登場させ、「私」は最後に、きまって「You」にこう問いかける。ディランの代名詞とも言えるキラーフレーズ、How does it feel(どんな気がする)、と。

How does it feel
How does it feel
To be on your own
With no direction home
Like a complete unknown
Like a rolling stone?
(どんな気がする。誰からも相手にされず、帰るあてのある家もない。誰からも相手にされず、転がる石のようになることは?)

もう一つの特徴がこの問いかけだ。

1/4ページ

最終更新:2016/12/11(日) 6:10
BuzzFeed Japan