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ネットに蔓延する「正しさ」が息苦しい その正義感が危うい理由

2016/12/17(土) 9:38配信

BuzzFeed Japan

小説家、星野智幸さんのインタビュー。テーマは「正義感」で一体になることの怖さ。インターネット上で、路上で、生活の場で……。「正しさ」の圧力から逃れる言葉を探す。【石戸諭 / BuzzFeed】

インターネットが息苦しい。そんな風に思う人は少なくない気がする。例えば原発問題。なにかにつけ賛成か反対か、批判するのかしないのかが問われ、意見が違うとわかると強い調子で言葉が返ってくる。

はじめは興味があった論争も、内輪ノリが強まって、なんだかどっちもどっちだな、と思って離れてしまう……。

「正しさや正義感は陶酔をもたらし、一体感を生む。この一体感こそが曲者です。ほんとうはみんな個人で思っていることが違うのに、集団の論理や言葉が優先されていく。これを僕は『正義という病』と呼んでいます。いまの社会のいろんなところに転がっているじゃないですか」

こう語るのは小説家の星野智幸さんだ。

新聞記者を経てメキシコに留学。いまの社会が抱えている問題を小説の中に取り込んできた作家だ。2000年に『目覚めよと人魚は歌う』で三島由紀夫賞。『俺俺』は亀梨和也さん主演で映画化され、今年は過去の作品をテーマ別に編み直した『星野智幸コレクション』も刊行された。

小説家が描きだす「デマ潰し」という正義

星野さんの小説を貫いているのは「正しさ」に対する違和感だ。最新長編『呪文』では、インターネットの炎上騒動をモチーフに、こんな構図を描いてみせた。舞台は「『今、ここ』ではなく、少しだけ未来」……。

ある駅の近くにある松保商店街。その一角にある「夕飯のとれる居酒屋」が、インターネットでデマを書き散らかされ炎上する。トラブルになった客が被害者を装って「暴力居酒屋」と書き、抗議が殺到したのだ。

居酒屋の店主はデマを潰すために事実関係を詳細に書いた反論をネットに公開する。毅然とした対応に加え、商店街の未来像、今後の対応を示すブログも話題になった。
これを機にネットの空気は変わる。「神対応」「崇拝するわ」といった声があふれ、商店街の客トラブルに対応するために有志の若者が立ち上がる。

デマには正しい情報を流すことで対抗する。これ以上の事実に反するデマは許さない。正義に突き動かされた有志のデマ潰し集団はやがて、デマを流した客が近隣住民であることを突き止める。

客、そしてデマに踊らされた地元住民=失格住民の洗い出しをはじめる。求めるのは彼らの改心だが、その方法はより過激になっていく……。

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最終更新:2016/12/17(土) 17:30
BuzzFeed Japan