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ネットに蔓延する「正しさ」が息苦しい その正義感が危うい理由

2016/12/17(土) 9:38配信

BuzzFeed Japan

「他の人の言葉を自分たちの『正しさ』のためにつかうことには、慎重じゃないといけない」

「福島の人が~~といったから」原発はやめるべきだ、あるいは、復興は必要なのだ。そんな言い方をする人はいつだっている。「当事者」が思っていることはひとりひとり違うはずなのに、個人の声としては聞かれず「福島」の声になっていき、誰かに代弁されていく。

「原発に反対する人へのシンパシーもあります。でも、推進するという人も反対する人も正義に酔って、問題をあまりにシンプルにしてしまう。複雑な問題がなかったことになると感じました」

「自分たちの陣営に味方した人だけでない、本当は、原発を受け入れざるをえない疲弊する地方に住む人たちの声、被災地に住み続ける人たちの声、避難先で人生を終える覚悟の人の声、それでも原発で働かざるをえない人の声……。小さな声を聴くことが必要だったと思います」

「他の人の言葉を自分たちの『正しさ』のためにつかうことには、慎重じゃないといけないし、ものすごく繊細な問題なはずです。正しい目的のためなら、繊細な問題は気にしなくてもいい。僕にはそんな風に聞こえてしまう」

小説は小さな言葉を拾うためにある、と星野さんは考えている。

「正しさ」に縛られているのは、大きな社会問題だけだろうか。社会に関心をもたなければ関係がないのか。

「例えば家族ですよね。あるいは男らしさ、女らしさ、セクシュアリティの問題……。本当は、誰もがどこにもカテゴライズされない部分を持っているにもかかわらず、みえない枠に抑えつけられそうになる」

コレクション2巻に収録された『毒身温泉』は性別や年齢が異なる独身者が集まり、新しいコミュニティーを作ろうとする。既存の価値観と対抗しようと独身を肯定しようとするが……。「対抗しなければならない」という思いにとらわれることで、彼ら自身が苦しくなり、より寛容な形で解放を求めていく。

自分たちの親子関係に、友人関係に、学校や会社に、自分だけではどうしようもならない「~~で、なければならない」という圧力がある。それに圧迫される人たちがいる。

「~~で、なければならない」の背景にあるのは、制度や規範だ。星野さんは、それを「政治」と呼ぶ。

「家族やセクシュアリティの問題は小さな世界の話です。でも、小さな世界にだって『政治』はある。小さな声をすくい上げて、書くことで、自分たちが何に絡め取られているのかがみえてくる」

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最終更新:2016/12/17(土) 17:30
BuzzFeed Japan

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