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「アレッポ忘れるな」と叫んだ大使殺害の男 ロシアとトルコの関係に影響は

2016/12/20(火) 21:45配信

THE PAGE

 トルコの首都アンカラで19日、両国の関係改善を目的とした写真展の開会式で演説を行おうとしたロシアのアンドレイ・カルロフ駐トルコ大使が、背後の男から突然銃撃を受けた。カルロフ大使は病院に搬送されたものの、間もなくしてロシア外務省は大使の死亡を発表した。銃撃を行った男はその場で治安要員に射殺された。1927年にポーランドのワルシャワで発生した殺害事件以来、ソ連時代も含めてロシアの大使が国外で殺害されることはこれまでなかった。ロシアとトルコが政治的に急接近する中で発生した今回の殺害事件。シリア問題をめぐり、モスクワでロシアとトルコ、イランの外務・国防大臣が集まって協議を行う前日に発生したこともあって、大使殺害に関するさまざまな説も飛び交っている状態だ。事件の詳細はまだ見えないままだが、これまでの情報を整理してみたいと思う。

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警察官IDを見せて入館との報道も

 19日に発生した事件は、メディアが集まった写真展でカルロフ大使が演説を始めようとした瞬間に発生しており、銃撃の一部始終は現場にいたジャーナリストによって写真や映像として記録されている。演説を始めようとした大使の後方で何発もの銃声が鳴り、そのまま大使は体を崩すようにして壇上で仰向けに倒れた。背後からの銃撃を受けた時点で、大使は重傷を負ったものと思われる。発砲したのは大使の後ろにいた22歳のトルコ人の男で、倒れた大使に近づき、さらに数発を大使に向けて発砲している。周囲の警察官らによって射殺される前に、この男性は観客やメディア関係者に向かって、「神は偉大なり。アレッポを忘れるな。シリアを忘れるな」と大声で叫んでいた。

 殺害されたカルロフ大使は62歳のベテラン外交官で、朝鮮語が堪能であった。ソ連時代の1979年から1991年までは、北朝鮮のソ連大使館でさまざまな役職を歴任し、92年から97年までと、2001年から06年までの間、韓国と北朝鮮でそれぞれロシア大使を務めていた。その後、ロシアに戻り、ロシア外務省内で着実に出世を続け、2013年7月から大使としてトルコに赴任していた。シリア情勢をめぐるトルコとロシアの緊張関係を緩和できる人物として大使に任命されたという見方が強く、昨年秋に発生したトルコ軍によるロシア軍機撃墜においてもロシアとトルコの両政府の橋渡し的存在として活躍を見せている。

 殺害犯はメブリュト・アルティンタスという22歳の警察官で、2014年から機動隊で勤務していた。トルコの国内メディアはこの男が、今年の夏に発生したクーデター未遂の後にエルドアン政権が実施した公職追放政策によって警察官の職を失い、現政権に対して憤っていたと伝えているが、真偽のほどは不明だ。またトルコ国内では、アルティンタス容疑者が現在も警察官で、19日は非番であったと伝えている。

 トルコとロシアの両メディアはスーツ姿のアルティンタス容疑者が警察官のIDを見せて会場入りしたという目撃情報を伝えているが、公職追放された話が真実だとすれば、なぜ警察官のIDを使って入館することができたのか、疑問は残る。ロシアの国営タス通信は、容疑者の使用したIDそのものが偽物だった可能性があると伝えている。加えて、スーツ姿のアルティンタス容疑者をシークレットサービスと思い込んでいいた者も少なくないようで、実際に殺害の直前に撮影された写真ではカルロフ大使の背後にアルティンタス容疑者が写っているのが確認できる。

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最終更新:2016/12/20(火) 21:47
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