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牛乳アレルギーと闘っていた母娘に何が「懸命な子育て」が一線を越えるとき

2016/12/25(日) 6:10配信

BuzzFeed Japan

過去最多の10万件を超えた児童虐待の相談件数。ルポライターの杉山春さんは、こうあるべきという型に過剰に適応しようとする、親たちの危うさを指摘する。【BuzzFeed Japan / 小林明子】

食べ物が喉を通らない 衰弱した子どもたちは助けを求めている。

牛乳アレルギーがある長女(5)に、母親(35)は紙パックの牛乳を飲ませた。12月11日、午前9時ごろのことだ。娘が呼吸困難になって苦しみ始めると、症状を和らげる薬を注射し、自ら119番通報した。警察は「未必の故意」による殺意があったと判断し、殺人未遂容疑で母親を逮捕した。

母親と娘は二人暮らしだった。医師の指導を受け、娘にアレルギー耐性をつけるために微量の牛乳を飲ませる治療を普段からしていた。母親は児童相談所や警察署に「育児に悩んでいる。子どもを預けたい」などと何度も相談していた。

食品表示で原材料を確かめ、レストランでは店員に材料を尋ね、わずかに混じる乳製品にも細心の注意を払う毎日だったはずだ。わが子が牛乳を摂取することに誰よりも気をつけていたはずの母親が、なぜこんな行動をとったのか。

「懸命な子育て」という危険

親子関係のもろさを描いたノンフィクションがある。

〈母親になることに強い思いをもっていた芽衣さんは、子育てに熱心だった。布おむつを使い、母乳にこだわった。子どもの思いに寄り添う母親でもあった〉
『ルポ虐待ー大阪二児置き去り死事件』より。この3年後、母親の芽衣は3歳と1歳の子どもたちをマンションの部屋に置き去りにした。外に出られないように扉に粘着テープを貼って約50日間放置し、餓死させた。

〈(真奈の)二回の入院日数は合計三十七日に及んだが、この間、ほとんど雅美一人で付き添っている。簡易ベッドで眠るのだが、ときどき智則(夫)も病室に泊まりにくる。そのときはベッドを智則に譲り、床にバスタオルを敷いて寝た。床が身体に当たって痛く身重の身体にはこたえたが、代わってくれと言うことは考えられなかった〉
『ネグレクトー育児放棄 真奈ちゃんはなぜ死んだか』より。この3年後、雅美と智則の夫婦は、3歳の真奈ちゃんを20日間近くも段ボール箱に入れ、ほとんど食事を与えず、餓死させた。

BuzzFeed Newsは、この2冊のノンフィクションを書いたルポライターの杉山春さんに話を聞いた。杉山さんは、厚木市で父親が5歳の長男を放置して死亡させた事件の裁判も傍聴している。

「3つの事件とも、親たちはある時期、真剣に頑張って子育てをしていました。むしろ手の抜き方がわからず、いい加減な子育てができなかった。こうあるべきだと考える子育ての型に、過剰に適応しようとする。端から見れば無理なのに、本人は無理だということに気がつかないのです」

過剰適応とは、周りの環境に合わせようとするあまり、自分の行動に無理が起きることをいう。

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最終更新:2016/12/25(日) 6:10
BuzzFeed Japan