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ライバルには絶対に負けられない。MRJ、開発費大幅上積みの覚悟

ニュースイッチ 2016/12/30(金) 9:50配信

すでに5000億円超、さらに膨らむ可能性も

 三菱重工業が開発を進める国産初の小型ジェット旅客機、MRJ(三菱リージョナルジェット)の開発コストが5000億円を超える見通しとなったことが分かった。事業化決定時に見込んだ約1800億円の3倍規模に膨らむ。

 2018年半ばを目指してきた量産初号機の納入延期が濃厚となる中、さらに開発費が増える可能性もある。コストを回収し利益の出る事業とするには、受注機数の大幅上積みが不可欠だ。

 MRJの開発は子会社の三菱航空機(愛知県豊山町)が担当しているが、当初13年を目指した全日本空輸への機体納入開始は相次ぎ遅延。5回目の延期の可能性が高まったことから、三菱重工は16年11月、宮永俊一社長直轄でMRJ開発を管理する組織を新設し、追加の人員・資金を投入してでも開発を加速する方針を打ち出した。

 納入開始時期は現行目標の18年半ばから、19年以降にずれ込むとの見方が強い。商業運航の前提となる型式証明の審査で、機体を制御する機器の配置変更などが必要となったためで、三菱重工は全日空(ANA)に納期が遅れる可能性を先に説明。12月22日にも現況を直接説明したが、新たな納期は示さず、最新の開発スケジュールは不透明なままだ。

 MRJの開発を急ぐのは、最大のライバル機と位置付けるブラジルの航空機大手エンブラエルが開発中の新型機より先に納入を開始し、最新鋭小型機の市場を押さえるためだ。

 延期が決まれば5度目となり、ブラジル・エンブラエルとの競争への影響は避けられない。

 さかのぼること9月末、三菱航空機の幹部はANAを訪ね、延期の恐れがあると説明した。量産機の生産を始めた段階で技術的な問題が発生したことを理由に挙げたが、具体的な内容には言及しなかった。

 三菱重工が08年に三菱航空機を設立し、MRJの事業化に乗り出した当初は、13年の納入を目指していた。しかし、納期はこれまで4度延期された。三菱重工は米ボーイングの下請けとしての実績は豊富だが、完成機のノウハウがなく、トラブルが相次いだためだ。

 納期が19年にずれれば、エンブラエルの最新機「E2」シリーズとの競争優位性が薄れる。エンブラエルは定員約100人のリージョナルジェット市場で首位の強敵。E2は18年に量産初号機を納入し、88人乗りのMRJと同規模の機種は20年に就航予定だ。

 両機種のエンジンは同じで、差別化のポイントとなる先行投入期間が短くなるのはMRJには痛手だ。MRJの受注数は427機で、大宮三菱重工会長は「開発中にこれだけ多くの受注を得ており、期待の高さを感じている」と手応えをみせる。だが、受注の4割はオプションで、5度目の延期となれば、解約する顧客が出る恐れがある。

 今回の問題以外にも、延期につながる要因がある。商業運航に必要な型式証明の取得のため、米国で本格実施する飛行試験だ。合計2500時間の飛行が必要だが、試験機4機にトラブルが生じ、改修が必要になれば、18年とする型式証明の取得時期が遅れる可能性もある。

 森本浩通三菱航空機社長は10月時点で納入延期については「まだ検討しなければならない項目はもちろん残っている」と話している。ターボプロップ機「YS11」以来、半世紀ぶりの国産旅客機開発を成功させるため、大きなヤマ場を迎えている。

最終更新:2016/12/30(金) 9:50

ニュースイッチ

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