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2017年国際展望 拡散する「トランプ現象」ポピュリズムが不満のみ込む

1/1(日) 13:00配信

THE PAGE

 2016年の世界で最も注目されたのが、その主張に賛否はあっても、米大統領選挙で勝利したドナルド・トランプ氏だったことに、異論は少ないと思います。「米国第一」を掲げ、「米国の利益」を何より優先させるという分かりやすい主張の一方で、外国人、女性、性的少数者、さらに日本を含む外国への差別的・攻撃的な姿勢など、トランプ氏個人のパーソナリティやスタイルは、しばしば「ポピュリズム」と呼ばれます。

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 しかし、それらの論評は多くの場合、ポピュリズムという語を意味が明確でないまま用いているように見受けられます。ポピュリズムに「大衆迎合主義」という訳をあてることもありますが、それでも曖昧さは拭えません。

 「トランプ現象後」の世界では、これまで以上に各国でポピュリズムが触発されやすくなるとみられます。ポピュリズムそのものの意味を明らかにしながら、それが広がる世界がどこに向かうかを考えます。(国際政治学者・六辻彰二)

不信感や危機感、回帰願望

 トランプ氏登場以前にも、アルゼンチンのファン・ペロン大統領(任1943-46、1973-76年)、米国の消費者運動、後述するヨーロッパの極右政党など、ポピュリズムと呼ばれる指導者や運動・組織はありました。それらにはいわゆる右派、左派のいずれも含まれ、ファシズムから共産主義まで、幅広い思想をパートナーにしてきたため、ポピュリズムを一つのイデオロギーとはみなせない、という意見もあります。

 2000年に『ポピュリズム』を著した政治学者ポール・タガートによると、ポピュリズムには主に以下の5つの特徴があります。

 第一に、政党や議員などに基づく議会制民主主義への不信感と敵対心です。つまり、国民の代表である議員や既存政党が、国民とかけ離れた存在となり、国民のニーズを把握しないことに対する、反エリート主義です。

 第二に、人々が助け合いながら一体性を保っていた過去の社会への回帰願望です。これは腐敗や専横といったイメージで捉えられやすい政治家、官僚、大企業経営者などへの反感と、「普通の人々」の方が道徳的に優れているという認識に基づきます。

 第三に、そのカメレオン的性質です。つまり、過去の理想化にとどまり、達成すべきゴール設定が曖昧になりやすいことは、状況に応じて影響力のあるイデオロギーと融通無碍に結びつきやすくするため、思想的・論理的な一貫性には乏しくなりがちです。

 第四に、経済停滞や大規模な人口移動などの変化や危機に対する危機感から生まれることです。この危機感は、危機に適切に対応できないエリートへの反感や、エリートの保護下にある弱者への敵意を増幅させやすくします。

 第五に、そして最後に、政治の世界で「主流」になることを避ける思考です。「普通の人々」を強調する以上、ポピュリストは既存の政治家や政党と常に一線を画する必要があります。そのため、政権を握るなど責任ある立場に立った時、それまでの主張をどこまで維持できるかが、ポピュリストにとっての生命線になります。

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最終更新:1/1(日) 13:00
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