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トランプ“大統領“を押しあげた力こそ<希望>?2017年、日本のチャンスはここにある

1/2(月) 8:00配信

BuzzFeed Japan

日本でトランプ現象は起きるのか?2017年の希望はどこにあるのか?社会学者、大澤真幸さんは、一見、希望とは真逆にある「閉塞感」のなかにこそチャンスがある、という。その理由とは?ロングインタビューでお届けします。【BuzzFeed / 石戸諭】

「大事なのは、トランプ現象の『先』を行くこと」。その意味とは?

ーーここに毎日新聞の世論調査(2015年版、最新は2016年版)があります。日本に住む人たちは、チャンスは平等にあるとは思っておらず、10年後に日本が住みやすい国になっているとは想像していない。一方で、おおむね生活に満足しているし、幸福である。一見すると非常に矛盾している結果に、閉塞感を読み解く鍵があると思います。

大澤さん:すごくシンプルに考えれば、将来がどうあれ、日本はとても良い国である。一時もてはやされたブータンのように、これだけ生活に満足していて幸福度が高い国に住んでいる、と考えることもできるわけです。しかし、それは間違っていますよね。どうも現実とは違う。

いまは幸せなのに、チャンスもなく、10年後に希望が持てないことは互いに関係し合っているというのが僕の仮説です。それはどういうことか。

こんな風に想像してみましょう。もうすぐ人生を終えようとするお年寄りが、人生を振り返って「自分は幸福だった」と思う。これはとてもわかりやすいですね。もう残された時間も少ないし、振り返った時、どこかで自分の人生を肯定して終えたいと思う。

いまの社会調査に現れている感情は、これに近いと思うんです。つまり、将来は悪く
なるだけであり、希望はない。だったら、せめていまはいいと思っていたいということでしょう。

これは体感的に理解できます。僕がまだ若かったときは、未来が良くなるというイメージがありました。20代なら10年後、30歳を過ぎた頃には社会にでていて収入もそれなりにあるだろうな、結婚もしているだろう、という「物語」が共有されていました。

でも、そんな物語はすっかりなくなってしまった。物語不在の時代です。未来は暗い、というより悲惨なイメージしかない。
それでも楽観的にみえるのはなぜか?(近著の)『可能なる革命』でも書いた事例を補助線につかいましょう。

アメリカのある町で、鉱山で長く働いていた父親を、アスベスト(石綿)が原因で亡くした女性がいる。彼女は、ほかにもアスベストが原因で亡くなった人がいることを突きとめ、父を雇っていた会社を相手取って、人々の健康を守れ、と訴えた。
町の人々は鉱山で働いている人もたくさんいる。だから、味方をしてくれるだろうと彼女は思った。しかし、町の人たちはまったく非協力的だったんですね。

それどころか、その会社に雇われ、鉱山で働くことに、彼らは深く感謝していた。他に産業もない町に雇用をうんでくれた、と。それを批判する彼女が許せなかったんです。
鉱山や自分たちの健康は安全である、というような人たちもでてきた。つまり「鉱山は安全である」と信じているように、ふるまいはじめたんですね。ちょっと話はそれるけど、原発の「安全神話」とも似ていると思いませんか?
--大澤さんは、原発安全神話ができたのは、日本人の知的能力が低く、批判力がなく、電力会社に騙されたからではない、とはっきり書いていますね。

そうなんです。アメリカ(の鉱山の町)でも似たような事例が観察できる。彼らは、アスベストは安全である、と微塵も疑っていないようにみえるし、現にアスベストの危険性を訴える運動は、強く攻撃されていた。
この補助線からわかるのは「途方もないリスクがある」と暗黙のうちに共有されている社会で、人々はどう行動するかです。

データよりも大事なのは、行動のほうなんです。

彼らのふるまいはとても逆説的ですね。あたかも、リスクそのものがないかのようにふるまい、自分は石綿症ではない、と根拠もないのに楽観的に思ってしまうのだから。そして、もう一つの逆説は、楽観的に思うことで、かえって悲劇的な結末を招いてしまうことです。

アスベストの問題でいえば、人々が楽観的にならず、彼女と一緒に立ち上がれば、打てる対策はあったかもしれない。よりましな未来があったかもしれない。でも、しなかった。

いま、日本社会が感じているのも、将来のリスクにどう対処していいのかわからないことの裏返しでしょう。より破滅的なシナリオを招くことの前ぶれ、と捉えることもできますし、より大きな変化を求める前兆ともいえます。

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最終更新:1/2(月) 8:05
BuzzFeed Japan

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