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「超人」とよばれた老院長の死 福島・高野病院を支える若手医師の思い

1/5(木) 17:00配信

BuzzFeed Japan

福島県広野町・高野病院。原発事故後にも地域に残り、医療を支えた老院長が亡くなった。彼の思いを受け止め、地域医療の崩壊を食い止めようと病院を支援する医師・坪倉正治さんが取材に応じた。【BuzzFeed / 石戸諭】

避難が続く街を「ゴーストタウン」と呼べない理由

院長急死、高野病院はどうなる?

高野病院は福島第一原発のすぐ近くにありながら、避難せず、地域を支え続けた病院としてしられる。

その老院長、高野英男さん(81歳)が昨年末、火災で亡くなった。敷地内の院長宅から出火し、遺体で発見されたのだ。この病院で唯一の常勤医だった、名物院長の急
死を受けて、病院は存続の危機に立たされた。

一報直後から「地域医療の火を消すな」と医師らによる支援する会が立ち上がり、周辺自治体の支援など存続に向けて動き出した。残された100人を超える入院患者、スタッフを抱え、これから高野病院はどうなるのか。

支援に入った若手医師の思い

東日本大震災直後から南相馬市などで医療支援にあたっている坪倉正治医師(34歳)は、年明け1月3日に高野病院の当直に入った。BuzzFeed Newsの取材にこう口を開いた。
「厳しい。本当に厳しいです」
何が厳しいのか。坪倉さんによると、高野病院を支援する会を通じて全国各地から応援の申し入れが届いている。すでに当直医については、1月分は目処がつきそうな状況だ。
もとより、震災直後の混乱を乗り越えたスタッフは、辛い状況のなかでも士気を維持していた。患者にも、支援にはいった医師にも「悲壮感を感じさせなかった」という。坪倉さんは「スタッフが混乱なく業務をこなすことで、これだけの危機なのに高野病院は崩壊しない。すごいことだ」と敬意を払う。
高野病院はホームページで、院長の娘、高野己保理事長名義でこんな声明をだした。

「院長 高野英男が私たちに遺した、『どんな時でも、自分の出来ることを粛々と行う』この言葉を忘れずに、院長の意志を受け継ぎ、職員一丸となり、これからも地域の医療を守っていく所存です」

当面の危機は乗り切れたように思う。しかし、問題は医師の人数を集めただけで、解決しない。

「高野院長は私からみると『超人』です。80歳を越えてもなお当直をこなし、本業は精神科なのに内科の診療もやっていた。非常勤の医師を統率して、地域の医療を支えてきたんです」

火災にあった自宅も病院のすぐ近く。事実上、365日24時間、地域の医療のために働いているようなものだった。

高野病院が継続するには、次の院長=常勤医を確保すること。これが必須条件になる。

病院の方針、ボランティア医師の管理、入院患者の治療方針、いざというときの危機管理……。医療的にも、経営面でもボランティアだけでは難しい問題がついて回るからだ。

ここでも課題は、単に後任院長、常勤医を見つけただけでは解決しないところにある。

「原発事故後の避難などで、大きな影響を受けた福島県沿岸部(浜通り)に残って働こうという医師は、高齢になっても身を粉にして働く昔気質の医師が多い。高野医師もその一人です。その代わりをすぐに、というのはとても難しいのです」

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最終更新:1/5(木) 19:53
BuzzFeed Japan