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科学者がいま、福島の若者に伝えたいこと

1/9(月) 8:00配信

BuzzFeed Japan

原発事故直後からツイッターでの発信が注目されてきた科学者、早野龍五さんが今年、定年を迎える。いま、福島の若者になにを伝えたいか。第一線の科学者は「福島に生まれたことを後悔する必要はどこにもない」と強い口調で語る。【BuzzFeed Japan / 石戸諭】

物理学者、早野龍五さん(65歳)。東京大学教授にして、福島第一原発事故後、その言動がもっとも注目された第一線の科学者だ。

事故直後、あらゆる憶測、流言、デマがインターネット上を飛び交った中にあって、早野さんは「事実」を分析し、ツイッターで情報を発信し続けた。

発信はつながりを生み、「本業」と並行して福島の支援にもかかわっていく。学校給食の調査や、子供用の内部被曝測定器の開発、地域の高校生たちとの活動……。そんな早野さんが今年、東大で定年を迎える。

原発事故、震災から6年目を迎えようとするいま、福島の若い世代に伝えたいことは何か?いつもの穏やかな口調で語りはじめた。

「自分の子供を産めるかどうか」という不安をもつ若い世代を減らしたい

震災5年という節目が終わって、6年目に向かっています。いま最大の課題は何か、ですか? 僕の答えはひとつしかありません。「自分の子供を産めるかどうか」という不安をもっている若い世代を減らすことです。

福島第一原発事故の被害者はいない、という人たちがいます。これは違います。多くの関係者の努力で、外部被曝も内部被曝も、大きな問題はほぼなくなりました。

でも、こうした若い世代の不安は「被害」ではないのか。これを放置しているのではないのか、という問題は残っています。なぜ、この問題を軽く見るのか。福島県で話していても、経済の話、農業の話は深刻だという大人たちはたくさんいます。

だけど、この問題が最優先だ、という話はほとんどされないですよね。経済も、確かに重要な問題なんです。でもね、最優先の問題は何かという話なんです。

福島高校で実際に体験したことをお話します。2015年6月、僕は講演をしにいきました。そこで、生徒たちにいくつか質問をしたんですね。福島高校は、県内でも屈指の進学校で、理系教育だって充実している。

目を閉じて、周りを見ないで手をあげてください、と僕は呼びかけました。最初に聞いたのは、家で福島産の食材を買うかどうかです。買わないという家は1割~2割くらいだったかな。次は外部被曝線量が高くて不安かどうか。これは少なかった。5%いるかいないか。

自分の子供を産めるか不安か、と聞くと10%くらい手が上がったんです。1割は事故から4年たっても、まだ不安だっていうんです。これだけ理系教育も充実している
福島高校で、1割は不安だと手をあげる。潜在的にはもっと多いかもしれないし、他の高校だったら、比率はもっと高いかもしれない。

子供を産めるかどうか、生徒から聞かれたらですか? 答えは躊躇なくイエスです。問題なく産める、と即答しますよ。そんな不安をいまでももたせていること自体が罪深いことですから。

僕は科学者として、データを集め、それを公表してきました。とにかく大事にしてき
たのは、いま福島に生まれたことを後悔する必要はどこにもないということです。

福島で実際に人々が生活している地域より自然放射線の量が多い地域なんていくらでもあります。福島は、外部被曝も内部被曝も日本の他の地域、世界各国と比べてもまったく問題ない。

いま、福島県で流通しているものをどれだけ食べても、他の地域と比べて問題になるような内部被曝はありえません。

これはデータをみて、自信を持って言えることです。なのに、これだけ不安だという生徒が残っている。

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最終更新:1/9(月) 8:00
BuzzFeed Japan