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【インタビュー】フルカワユタカ、『And I’m a Rock Star』に「ドーパンがライバルじゃなくなった3年間」

BARKS 1/11(水) 23:27配信

元DOPING PANDAのフルカワユタカが2017年1月11日、約3年ぶりの2ndフルアルバム『And I’m a Rock Star』をリリースする。同アルバムには2015年発表のミニアルバム『I don’t wanna dance』表題曲の再録をはじめ、FRONTIER BACKYARDやりぶに提供した楽曲のセルフカバーほか、Charisma.comのMCいつかがRAPで参加したナンバーなど、精度を高めた全10曲を収録した。

◆「サバク」ミュージックビデオ 動画

2016年のフルカワユタカは、Base Ball Bearのツアーへサポートギタリストとして参加したことをはじめ、ART-SCHOOLやthe band apartとの対バン企画、LOW IQ 01 & THE RHYTHM MAKERSへのギタリスト参加など、自身のライブ活動やセッションに至るまで、実に精力的に駆け抜けた。そしてそれら経験は、自らの立脚点を照らし、前へ前へ歩みを進める原動力ともなったようだ。アルバムタイトルは『And I’m a Rock Star』。この言葉に込められた意志、これまでの3年間がもたらしたもの、収録全曲が示す現在のフルカワユタカのサウンド&ビジョンなど、深く濃く語ってもらったロングインタビューをお届けしたい。

   ◆   ◆   ◆

■鍵を掛けていた僕を外に出してくれたのは
■どう考えてもBase Ball Bearなんですよ

──約3年ぶりのフルアルバム『And I’m a Rock Star』が完成しました。1stフルアルバムが『emotion』というタイトルだったのに対して、今回はライブMCの自己紹介的な一節であり、ご自身の愛称を冠したもので。まずはこのタイトルを付けた理由からお訊きしたいのですが。

フルカワ:3曲目に収録した同名の楽曲「and I'm a rock star」は、先に曲があって歌詞は後から付けたものなんですね。じゃあ、“And I'm a Rock Star”という言葉をどの時点で使おうと思ったかというと、アルバムの制作が決定して、そのすぐ後だったと思います。

──当初から、アルバムタイトルとしてこの言葉を使おうと?

フルカワ:そうだったと思います。なんでそうしたかといえば、いろいろな気持ちがあって。その中からひとつ具体的な例を挙げると、ベボベのギタリストとしてツアーを廻ったじゃないですか(※2016年のツアー<Base Ball Bear LIVE BY THE C2>にサポートギタリストとして参加)。SNSとかも含めて、ベボベのファンのコが僕を呼ぶときの名前が、“フルカワさん”だったんですよ。それは小出くんとかが僕のことをそう呼んでたからだと思うんですけど、“スター”とか“ロックスター”ではなかったんです。

──ベボベのメンバーやファンからしたら、敬意を込めて“フルカワさん”だったということですよね。

フルカワ:ドーパンのボーカル&ギターの人だ、ということを認識していたとしてもね。当然のことなんだけど、さらにジェネレーションが下の人たちにとっては、僕が“ロックスター”と呼ばれていたという感覚もない。そういうことをベボベのツアーをきっかけに知って……正直、ちょっと寂しかった(笑)。

──“ロックスター”という愛称は過去のものではないという意識?

フルカワ:うん、もうちょっと“ロックスター”という言葉を使っていきたいというのはありますね。活動はそれなりにしてるんだけど、特に2015年はあまり表に出ることがなかったし、“ロックスター”という発信の仕方をしていなかったから、自分自身薄々感じてたんですけどね。“ドーパンのハヤト、タロティ、スター”のスターの部分がどんどん“フルカワユタカ”になっているという、寂しさ(笑)。

──では、このタイトルは“ロックスター”を取り戻すという意志の表れですか? それとも新たに作り上げていくという決意?

フルカワ:……ああ、それはどっちなんでしょうね。でも、今の自分の発言を振り返ってみると、どうやら前者ですよね(笑)。とはいえ、昔MCで、“And I’m a Rock Star”と言っていたのと今では、意味合いが変わってきているという自覚もあるんです。

──というと?

フルカワ:先輩から“おい、スター。コーヒー買ってこい”って言われるような“ロックスター”だっていう昔話はネタとしてあったんです。だから“ただのニックネームですよ”みたいなね。一方で、“I’m a Rock Star”と言うことで自分を鼓舞してたし、それが周りを挑発的に揶揄するトゲトゲした自分のキャラクターとか、ステージングの武装にはなっていたんです。でも今は、“ロックスター”に居心地のよさがあるし、懐かしさもある。“I’m a Rock Star”ということがウソじゃなくなっているというか、決して武装とか装飾ではないんです。

──今は“ロックスター”という言葉自体に、煌びやかさとか東京ドーム何日公演みたいなものとは違うものを感じている?

フルカワ:昔はそれこそミック・ジャガーとか、そういうものとして発言していた“ロックスター”という言葉が、今は愛称も込みで、自分の中のロックスター像みたいなものに変化して。それは、いわゆるステレオタイプのマッチョでパワフルなスターではないんですね。BARKSで、ああいう長いコラムを書くのもロックスターだし、神経質な一面を持っているのもロックスター。そういう僕の名札代わりとして、“ロックスター”と言うことに照れがなくなった自分に気づいたというか。そう呼ばれることもイヤじゃないし、愛着が沸いちゃってるというのがあって今回タイトルにしてみようかなと。そこが大きいですね。

──今だからこそ付けたいタイトルだと言うこともできます?

フルカワ:ドーパン解散後の1枚目でこのタイトルを付けたら、とてつもなく牙を剥いた感じになっちゃうし、もちろん当時そういう意識はまったくなかったですから。3年経って、自然とこのタイトルに落ち着いたという。もし、僕のことを知らない人が見たら、“すげえタイトルだな!?”と思うかもしれないけど、今の僕のこのナチュラルな感じを知っている人からすると、“なにか思うところがあって付けたタイトルだろうな”と察知してもらえるんじゃないかな。

──ナチュラルという意味では、アルバムのアートワークも着飾らないロックスターがフィーチャーされていることが印象的で、それについては後ほどうかがいたいと思います。で、今回はアルバムのプレス資料にフルカワさん自身の言葉が記されていますよね。そこでは収録曲が、“インディーズ時代のドーパンを彷彿とさせるパンクロック”、“十八番とも言えるダンスロック”、“後期ドーパンに数多く登場したファンクネス”、そして“ドーパン時代にはなかった歌の世界観”といった4つにカテゴライズされていて。つまり、過去から現在までが音楽でつながった内容にもなっているという。

フルカワ:特に『emotion』リリース以降、とても自然につながった3年間をありのまま表現するという感覚でしたね。振り返ると、『emotion』のリリースツアー(※<emotion tour 2014>)をブッキングから何からひとりでやってみて、もしかしたらドーパン解散のときよりも打ちのめされた気がするんですね。語弊があるかもしれないけど、案外ひとりだったら思う存分やれて、違う世界が広がるんじゃないか?っていう気持ちもあったんです、そういう気持ちがなきゃやれないしね。ところが、それがどん詰まったときの絶望感。“あれ?そうはならないんだ”っていう。

──それは楽曲制作とか、創作面とはまた別の話ですよね。

フルカワ:そうです。ツアーの動員とか物理的なことで。もしかしたら、もう思うように音楽ができないのかなって。そういう意味で、『emotion』を出した後のほうが心がボッキリ折れましたね。すべてをひとりでやるには限界があると思ったからこそ、SMA(※所属事務所)に戻って。そこからの前を向いていく過程みたいなものが、このアルバムにはあるのかもしれない。決して後ろ向きではないけど、バカ騒ぎしているわけではない。そこを汲み取ってほしいわけではないんですけど、それが真実ですね。

──『emotion』リリースから現在まで、ドーパン時代の<無限大ダンスタイム>の復活があったり、Base Ball Bearへのサポート参加、ART-SCHOOLやthe band apartとの久々の対バン、LOW IQ 01 & THE RHYTHM MAKERSへの参加などありましたが、それらも制作には影響しています?

フルカワ:2016年のことはすごく関係していると思いますね。ま、アートだけは関係ないです、全然。

──相変わらずART-SCHOOLというか木下さんに対してはトゲトゲしい発言を(笑)。

フルカワ:ははは。『emotion』の頃は、“ドーパンと違うものを”とか“越えなきゃ”と思ってたんだけど、3年を経て、ドーパンが解散したことを目の敵にしなくなったんだな、というのがあるんですよ。アートとの対バンライブ(2016年5月12日@東京キネマ倶楽部<ヨカノスゴシカタ 3>)で、たまたま僕のサポートベースが元アートの宇野ちゃんで。そこにキングもいるんだったら、ステージに上げちゃえ(※第三期ART-SCHOOLが一夜限り復活した)っていうサプライズというかイタズラを仕掛けたじゃないですか。僕がまだ解散を目の敵にしているような状態だったら、それを自分からやったかな?と思うと、むしろ“僕のサポートは宇野ちゃんじゃないベースにしなきゃ”とか、そういう気の遣い方をしてたと思うんです。

──ご自身の中でドーパンに決着がついた?

フルカワ:それにはやっぱり、ドーパンの曲を解禁したことが大きくてね。もうひとつはベボベでツアーを廻って、バンドを思い知ったというか。間近でバンドを客観的に見られたのは初めてでしたから。“ああ、そうだ。そうだった”という気づきがあったし、バンドっていいなとも思った。でも、僕はソロなんだということも同時に知るわけですよ。

──それも自然の流れの中で。

フルカワ:そう。鍵を掛けまくっていた僕を、自然と外に出してくれたのはどう考えてもベボベなんですよ。……っていうと、彼らも切羽詰まった状況で必死だったし、以前BARKSのインタビューでお話したような経緯もあるところで僕に声を掛けてくれたわけだから、こういう言い方もヘンなんですけど。……ただ、導いてもらったなというところは確実にあるんです。後輩だし、世の中的には僕が助けたカタチになったわけだから、ホントにヘンなんですけどね。そこから、先祖返りじゃないですけど、バンアパと対バンしたり、市川さんのサポートギタリストとして声を掛けていただいたり。この3年間は本当にデカかった。だから、ドーパンがライバルじゃなくなった3年間なんですかね。

■“アルバムには入れない”って
■自分をだましてつくったのがこの曲

──では、アルバム制作がスタートしたのは?

フルカワ:ベボベとバンアパとの対バンを決めたちょっと後、ベボベの野音ライブの前くらいですかね。後輩バンドを援助したことで、“ああ、まだギターやってるんだ”とか、改めて僕の存在に気づいた人も大勢いたと思うんですよ。そこでマネージャーも僕自身も「なにかやらなきゃね」という話をして。2015年のライブで<無限大ダンスタイム>も解禁したし、今度はフルカワユタカとして、音源を出してショウをみせなきゃっていうことがはっきりしたのが、そのときですね。

──それって2016年の春のことですよね? 結構最近の話じゃないですか。

フルカワ:そう。で、早速夏ぐらいにレコーディングしましょうってことになって、そこに向かって書いた曲もあるんです。ただ、このアルバムは3年間の中でつくったアイデアを、曲として組み立てていったというイメージのほうが近い。

──そういった中で、一番最初に着手した曲は?

フルカワ:たとえば「真夜中のアイソレーション」はSMAに戻ってすぐにつくったメロディですし、チープな打ち込みに仮歌をのせたものがあったんです。けど、リフはその後でつくったりしてるから、取りかかったという意味では、もう時期はバラバラ。アルバムに収録された楽曲の状態として一番最初にできたのは「プラスティックレィディ」とか「can you feel」とか楽曲提供したものだけど、それを除くと「サバク」かな。これは、ちょうどアルバムをつくるっていう話が進んだときに、SMAの宣伝部から「アニメのタイアップがあるけど、やりますか?」という話が来て。それに向けてつくった曲でもあるんですよ。でね、僕、自分の曲をつくるとなると、自身にすごく手かせ足かせをかけるんです。これまでの曲と食い合わないようにとか、人がやったことのないものをとか。それはBARKSの連載コラムも一緒ですけど(笑)。

──精度を高めて、とことん作り込むわけですね(笑)。

フルカワ:それが自分を動きにくくしちゃうんです(笑)。だから、アルバムに入れることは狙ってたんですけど、“アルバムには入れない”って自分をだまして、角度の低いアニメのタイアップっていうモチベーションでつくったのがこの曲。

──面倒くさい(笑)。

フルカワ:そう、面倒くさいんです(笑)。話が、わけ分かんないでしょ。

──ということは、リード曲としてミュージックビデオも制作されてますけど、「サバク」がアルバムの核となった楽曲ではないと?

フルカワ:違うんです。ずいぶんキャッチーな楽曲に仕上げられたのは、そういう理由なんです。あるスイッチをOFFって、あるスイッチをONにしてつくった結果、インディー時代のパンクっぽい曲が書けたという。今の自分の哲学とモチベーションを全開でつくると、どうしても“今のフルカワユタカであるべき”というものしかつくれなくなっちゃう。こだわっちゃうから。

──インディー時代とは違って、今は技も引き出しもたくさんありますからね。

フルカワ:そう。そういうものから突き抜けたかった。ドーパンが田上(修太郎:FRONTIER BACKYARD)さんにプロデュースしてもらう前、インディーで2~3枚リリースしているんですけど、なんだったら、その時代のフルカワユタカだなって個人的には思うんですよ。そういう曲が書けてよかったと思うのは、“今のフルカワユタカじゃなきゃ”って思わなかったからで、一方で、それが今のフルカワユタカだったりもするんですよ。

──だから面倒くさいんですって(笑)。

フルカワ:ははは(笑)。当初は「サバク」でミュージックビデオを制作するっていう話はなかったんです。だけど、マネージャーが結構気に入ってくれて、そこは客観的な意見を尊重して撮ったんです。そうしたら今は、カワイイ曲の上位になっちゃいましたね(笑)。作品ってそういうもんなんですよ。

──とはいえ歌詞は、先ほどおっしゃった“絶望から前を向いていくフルカワさん自身の過程”みたいなものが感じられますが。

フルカワ:歌詞はですね、アニメのタイアップ用だったので簡単なあらすじを頭に入れつつ、それっぽく書いたんですよ。ところが、自分の中にある気持ちしか書けないので、必要以上に赤裸々になっているということに、アルバムに収録するとき初めて気づくんです(笑)。だから歌詞も作曲と同じで、アルバム用に書かなきゃと思っていたら、ここまで分かりやすい言葉でここまで自分の気持ちを書いたかな?って。

──ノンフィクションですよね?

フルカワ:そうですね。思えば、こういうストレートな歌詞は書いてこなかったんですよ。ある種、僕にしては子供っぽいというか、伝わりやすいストーリーと文体にはなっているんですけど、案外恥ずかしさはないんです。時間をかけて真剣に書いた歌詞でもあるので。たとえば、「too young to die」(※『emotion』収録曲)は“倒れたけど、また立ち上がる”内容の歌詞で、ギターリフから始まるパンクチューンという意味では、一見「サバク」と似ているんですね。だけど全然違っていて、そこにリアルに作品をつくる面白さを感じたというか。「too young to die」が思いっきり自分のことを歌っているのに対して、「サバク」は“君”という客観的な目線で歌ってる。「too young to die」は表現に照れがあるから、サビが英語だったり回りくどい書き方をしているけど、「サバク」は全編日本語の直接的な表現で、客観的だからより具体的。「too young to die」は怒りとか苛立ちとか、フルカワユタカが得意としていたネガティヴエンジンがあるけど、「サバク」はネガティヴエンジンが薄くてこっちのほうがナチュラルに前を向いているんですよ。

──絶望も孤独も知った人間だからこその強さというか。

フルカワ:そう、自分の弱さ………ちょっと! 僕、かつてこんなに歌詞を解説したことはないですよ(笑)!

──ははははは! 確かに(笑)。

フルカワ:これもコラムを書いてるせいです!

──この3年間の変化が、自然とインタビューにも表れてるということで。

フルカワ:ははは。そう、僕はこの1年、特に言葉と向き合ってきちゃったんですよ(笑)。でね、「サバク」は本当にそういうことで、自分の弱さが悪かったんだって、自分に反省ができている。苛立ちではないんです。だから、「too young to die」も「サバク」もパンクだし、テーマは“立ち上がる系”のものなんですけど、両者は決定的に違う。不思議ですよね。

──サウンド的な肌触りも違いますよ。

フルカワ:「too young to die」がダウンピッキングでコードを弾き狂っているのに対して、「サバク」はちょっと跳ねを強調したリズムだったり、テンションコードを使ってるから、似てるようで違いますね。この2曲をライブでどう使っていこうかなっていうのは、今から楽しみで。両方ともオープニングっぽい曲ですから。

──資料によると「next to you」もインデーズ時代のドーパンを彷彿とさせるキャッチーなパンクということですが。

フルカワ:それを意識して書きました。楽曲としてはコード進行に工夫を凝らして。たとえばBメロは、7thコードの響きを活かしているけどパンクでしょ。それこそ田上さんとやってた頃のパンクチューンは7thコードを入れてたりしてるんですね。昔の渋谷系……っていうとダサくなっちゃいますけど、7thを歪ませるっていうのがあの時代のひとつのセオリーみたいなところがあって。でも、the band apartとかDOPING PANDAみたいに採り入れることが出来てるバンドはそうそういなかった。しかも僕らとバンアパは、ちょっと違う使い方をしていてね。その“売り”みたいなものを思い出しながら、狙いながら書いた曲だったので、インデー時代のドーパンっていう形容をしています。

──さらに言うと、これ、パンクというにはあまりにもギターソロの速弾きがエグイんですが。

フルカワ:もうね、これは弾きましたよ。こういう硬いピッキングであのテンポで弾ける人って、実はあんまりいないでしょ。コンプレッサーを掛けて、薄くディレイを掛けて、レクチファイヤーとかよく歪むアンプでっていうカタチだったら、それこそ髪の長い人がYouTubeとかにいっぱい動画を上げてますけど。ブラウンサウンド(※エディ・ヴァン・ヘイレンのギターサウンド)っていうと言い過ぎかもしれないですけど、アンプ直でオルタネイトピッキングの音まで聞こえるような速弾きは、ヌーノ・ベッテンコートとかポール・ギルバートみたいに、ちゃんとリストで弾かないとこうはならないですから。どこぞの音楽学校の先生みたいに、サラサラっと撫でるように弾いても絶対こういう音は出ない。弾けるんだから弾いちゃえと、ちょっと強引な展開でしたけどね(笑)。

──ほんの数小節にギタリスト・フルカワユタカの真価を垣間見せるあたりが心憎くもあります。

フルカワ:ははは。僕はギタリストですからね(笑)。

■ドーパン時代から歌詞にちょっとだけ
■変態が入ってくるんですけど

──ギターという意味では「I don't wanna dance」のカッティングも聴きどころで。この曲と「プラスティックレィディ」はフルカワさんの十八番とも言えるダンスロックチューンです。

フルカワ:「I don't wanna dance」は同名のミニアルバム(※2015年11月リリース)のタイトルチューンでありつつ、あえて今回も収録したのは曲に自信があるからで。4つ打ちとかダンスロックっていうものは、今、世の中に溢れているけど、16ビートでアフロっていうかブラックな感じを含んだダンスロックっていうのは僕にしか書けないだろうなっていう自負があるんです。ミニアルバムは僕自身がエンジニアリングまで手掛けたもので、それをプロのエンジニアさんの手で作業してもらったらどうなるだろうなって単純な興味もあった。結果、すごく良くなりましたね。

──再収録するにあたって録り直しをしてますよね。

フルカワ:ライブのサポートをしてくれてるカディオのドラムは、この曲だけはホントにいいので(笑)。ネタばらしすると、これ、歌もコーラスも含めて全部1テイクなんですよ。アルバムはドラム以外、全部自分で弾いてるんですけど、僕は基本的にパンチインはしない派で、この曲は本当に何もしていない。僕のベースとカディオのドラムを“せーの”で録って、ギターのベーシック2本もソロも1テイク。だから、ドラムとベース、ギター2本とギターソロ、歌とコーラスの7つのパートを一発ずつ録って渡しただけ。3分50秒の曲だから、録り時間は30分くらいです。それをそのままミックスしたかったんですよね。

──ライブ感とか、一発取りに近い勢いを封じ込めたかったということですか?

フルカワ:今のレコーディングってみんなスクエアな音になるじゃないですか、あとで直しちゃうから。それもパンチインどころの話じゃなくて、仮に1テイクで録ったとしてもそれを部分的に弾き直したり、PC上で直したりしてるから、結果それは1テイクではない。昔のレコーディングを遡れば、スタジオにマイク1本だけで、ドラムがうるさかったらマイクから遠ざけて録って、そのままリリースするっていう時代があったでしょ。そういう当たり前のことをやる人が減っている中で、僕はそれができるから。この曲では絶対挑戦しようと思っていたんです。

──それって、この曲に限ってではないですよね?

フルカワ:ベースとギターのベーシックに関しては、ほぼ全曲その方法論ですね。ギターソロはさすがに何テイクか録って、その中から良いものを選びましたけど、つなげたりはしてない。一筆書きみたいなものです。

──一方の「プラスティックレィディ」は、りぶのアルバム『singing Rib』に提供した楽曲のセルフカバーですけど、個人的にこの曲、大好きです。

フルカワ:これはね、本当にありがたいんですけど、僕の周りのみんなが褒めるんですよ。この曲はまず、りぶ側から「歌い手とか、ニコ生とか気にせず、フルカワさんらしい曲を」って求められたんです。それに対して、“こういうことかな?”と思って書いて渡したら、「もう震えました」と言っていただいて(笑)。こういう曲はね、書けちゃうんですよ。インディーのときの「Transient happiness」然り、メジャーの「MIRACLE」然り。僕としてはドーパンのときからずっと、こういう曲を必ずアルバムに入れようとやってきてて。今回もちゃんと僕に求められる“フルカワユタカのダンスロック”が書けた。ただ、言葉は悪いんですが、作家としてはちょっと食傷気味なところもあってね(笑)。

──あら。

フルカワ:だけど、masasucksには「サバク」のミュージックビデオに出てもらう経緯もあったので音源を先に送ったんですけど、「なんでミュージックビデオが「プラスティックレィディ」じゃないんや。どう考えてもこっちやろ」って連絡があったくらいで。というところで、本当に嬉しいんで、この感じ、今後も頑張ります(笑)。

──食傷気味って、裏を返すと好物というか得意ってことですよね。ということは、フルカワさんにとってはラクな作業です?

フルカワ:いや、逆に一番しんどい作業です。以前、Charisma.comにも楽曲提供(※2016年11月リリース『unPOP』収録曲「もや燃やして」)したじゃないですか。彼女たちの楽曲には、芯が強いんだけどちょっとずらしたものが多くて、僕はそこに興味を持っていたので、まずエッジーな曲を書いていたんです。ところが何かの経緯で“「The Fire」(※DOPING PANDAミニアルバム『High Pressure』収録曲/2005年発表)みたいな曲を”という話が出て。僕としては“……ああ、一番大変なやつだ”と(笑)。僕はちょっと変えて出すっていうズルができない人なので、以前の曲と被らないように、手を変え品を変えやってきましたけど、それが本当にしんどい。ただ、楽曲提供だとそういうところを求められるし、それはありがたいことですよね。今回、提供楽曲とほぼ同じアレンジのこの曲をアルバムに入れたのは、ファンのためでもあるんです。

──この曲には新しい挑戦もありますよね?

フルカワ:サビが全部ファルセットっていうのはドーパン時代もなかったかな。提供用に書いた楽曲はキーがそもそも違うんですね。ファルセットは苦手じゃないものの思いっきりフィーチャリングしたことはなかったから、そこに関しては面白いですよね。

──今回は歌に関しても歌詞に関しても意欲的で。連載コラムの第5回目では自身の声について“今の自分の音楽や声が好きだ”と記されていますが、アルバムには“ドーパン時代にはなかった歌の世界観”というものがあります。それが、先ほど話に出た「真夜中のアイソレーション」と、Charisma.comのいつかさんががゲスト参加した「walk around」。

フルカワ:この2曲は歌詞ですね。今回は全曲、今までより踏み込んで歌詞を書いたんですけど、この2曲に関しては変態性がちゃんと入れられているというか。ドーパン時代から歌詞にちょっとだけ変態が入ってくるんですけど、“オレってこういうタイプの変態だよな”って自分でもわかりやすく………なにをさっきから変態変態と言ってるんだか、オレは(笑)。

──ただ、どちらも楽曲自体はミディアムテンポにキレイなメロディが乗ってるので、音だけ聴くと変態って感じでもないという。

フルカワ:たしかにどちらもメロディがキレイですよね。ところが「真夜中のアイソレーション」の歌詞は、一歩角度を変えて見るとヤバくないですか? それがCメロにつながっていくんですけど。物事って必ず二面があるでしょ。その片方が少しでも見えたとき、今までキレイだと思っていた話がガラッと変わっていくような。これまではわかりやすく変態な曲と、わかりやすくキレイな曲は書いてきたんですけど、今回はひとつの歌詞に二面性を持たせるという意味で、この2曲は上手く表現できたかな。

──「walk around」はさらに、Charisma.comのいつかさんによるラップパートが乗ってます。

フルカワ:いつかちゃんに本当に感謝ですね。こんなことは今までなかったんですけど、「walk around」は歌詞が書けたときの満足感があって、その先の楽曲アレンジをあまり詰めなかったんです(笑)。っていうのは、Bメロ抜けの転調後から最後にAメロに戻るまでの16小節、そこに歌詞を埋められる気がまったくしなかった。もう出来上がっちゃってると思ってたから。ただ、そこはギターソロじゃないし、かといってそのままでもない。シンセのビートを入れたまま、時がどんどん過ぎていって(笑)。そんな時に制作ミーティングがあって、Charisma.comに楽曲提供したことを改めて思い出して、“あ、ピースが埋まった”と。

──いつかさんとは歌詞についての話も?

フルカワ:いや全然。この曲の歌詞は「サバク」と違って、だいぶ説明を省いた抽象的なものなので、僕だけがわかればいいという書き方なんですね。で、その16小節も、いつかちゃんの解釈で書いてもらったほうがいいと思ったし、彼女も自分の意志で僕に歌詞の意味を聞いてくることもなく。レコーディング現場で初めて歌を入れてもらって、そこで初めて歌詞も知ったんです。もう十分でした。やっぱりすごくセンスのいい人だから、この楽曲にオチがつきましたね。

──女性の声が似合う楽曲でもあります。

フルカワ:特に低めで倍音を含んだ女性の声ってあまりないですから。この曲によってアルバム全体が引き締まった感じがしました。

■どうにか広がってほしいという類ではなく
■伝わってほしいし、伝わらないわけがない

──そして「lime light」と「can you feel」は後期ドーパンに数多く登場したファンクネス。

フルカワ:「lime light」はもう、ドーパンの『YELLOW FUNK』(※メジャー4thアルバム/2011年発表)くらいからの、自分がやりたい音楽の延長です。これくらいのテンポ感で跳ねて、実は休符が音楽をつくっているというところ。しかも洋楽じゃない、日本人的なファンクネス。それをまたひとつ前に進めることができたかな。しかも、“最後に転調してギターソロでフェイドアウトするんだ!? ”みたいなところも含めてね。

──ロックバンドがあまり多用しないフェイドアウトですが、そういえば今回のアルバムには多くないですか?

フルカワ:多いです、自分でも気づいてました。これはフルカワユタカ名義になってからのライブの影響だと思うんですけど、ステージではエクストラの部分が多いじゃないですか。たとえばエンディングを伸ばして、僕と新井くんとでギターソロを掛け合うみたいな。もともとそういう音楽が好きなのもあるし。どうなんですかね、年齢的な部分もあるのかな。ジャン!って終わらせるよりも、余韻の部分を楽しむという。

──ちなみに「can you feel」もフェイドアウトなんですが、この曲はFRONTIER BACKYARDのミニアルバム『Backyard Session #2』にフルカワさんが提供した楽曲のセルフカバーです。

フルカワ:「can you feel」は田上さんをイメージして、彼がつくりそうな曲を書いたんです。そうしたら思いっきり、「フルカワっぽいね」って田上さんに言われたという(笑)。実はこの3年間の中で、最も理想とするものが書けたと思ったのが、この曲。だからどうしても入れたかったんですよね。「サバク」が自分の手かせ足かせを外して書いたものだったり、「プラスティックレィディ」が求められるものに対して壁を乗り越えて書いたものだったり、他の曲にも挑戦とかも含めて何かしらそういうものがあるんです。それを全部取っ払うと、おそらく「can you feel」みたいな曲を揃えたアルバムになる。これはさっき言った“手クセじゃないものを書かなきゃいけない”っていうことと矛盾しちゃうんだけど、超手クセですごいものを書きたいんです。それでアルバムがつくれたら、とんでもない作品になると思っていて。そういう曲が、この3年の間に1曲でも書けた僕は、すごく幸運だったと思う。そういう曲を生み出せないままアルバムをつくってしまうアーティストも少なくないから。

──フルカワさんにとって今、最もベストな楽曲?

フルカワ:いや、複雑な話なんですけど、だからといって収録したこの曲が、この3年間のベストかというと違ったりもするんです。純粋に作曲だけの話で、メロディー、コード、フレーズ、アレンジだけでいえば、この3年でピカイチですけどね。ファレル・ウィリアムスとかスティングとか、ホワイトとブラックがクロスオーバーしたような通り一遍でないもの、カテゴライズされないものを書きたくて、それがカタチになった曲だという。

──なるほど。で、アルバムのタイトル曲「and I'm a rock star」はラテンのリズムで、レゲエテイストの「so lovely」共々、アルバムに心地よい温度感を加えてます。

フルカワ:おっしゃるとおり、「and I'm a rock star」は、“サンバ”とか“スティング”とかが仮タイトルでしたね。歌詞は一番最後に書いたんですけど。

──“過去と未来が全部一つになって泣きそうな僕に”という一節が今のフルカワさんを表していますよね。この歌詞を読むと、“ロックスター”を謳いつつも、自然体を画に描いたようなジャケット写真に合点がいきました。オープニングナンバーの「サバク」もジャケット写真の意味を物語ってますし。

フルカワ:僕は昔から、アルバムの1曲目とジャケット写真がリンクする人間なんです。それをセットとして捉えている。『And I’m a Rock Star』も「サバク」にちなんだロケーションで撮りたいっていうことが、まず頭にあって。伊豆大島に日本唯一の砂漠があるっていうことで、MVの監督と相談してアートワークを考えたんです。そのときすでに“もの悲しさ”と“スケール感の大きさ”を足そうというアイデアは出てましたから。「サバク」の歌詞もコードワークもそう。カラッとしているけどメランコリック。それがナチュラルな『And I’m a Rock Star』の姿で、今の自分自身とリンクしているんです。

──では最後に、フルカワさんの連載コラムを読み返したところ、『I don’t wanna dance』リリース直後のコラムに、“セールスやチャートを気にせず、ただ自分が思うカッコいいものをつくろうとしている今。それこそが色々な仕掛けにまさる、最強の武器だと信じている今”という言葉があったんですね。『And I’m a Rock Star』リリースを目前に控えた今、どんな心持ちですか?

フルカワ:不思議なもので、前回はまったく気にならなかったことが、今回は多少気になるようになっているんですね。というのは、この1年の間に予想外のこともいろいろあって……先ほど話したように、ベボベやLOW IQ 01に参加したこととか、バンアパとの対バンがあったり。そういうことを経て、僕に気づいてなかった人が気づいてくれているという実感もある。そういう人たちがどう受け取ってくれるかなという意味で、気になるんです。ただ、それって数字云々ではないんですね。どうにかして広がってほしいという類のものではなくて、伝わってほしい。赤裸々につくっているからか、伝わるだろうな、伝わらないわけないなっていう自信があるんです。

──そういう意味では今回、歌詞の変化も大きいですか?

フルカワ:そう。だから連載コラムの存在が大きいんですよ。本気で書いてますからね。遡ってコラムを読んでいただいて、“ああ、こういう活動をしてきたから、こういうアルバムができたんだな”って思ってもらってもいいし。当初、アルバムコンセプトはなかったんですけど、完成した結果、この3年の編纂集がコンセプトになっていたという。アルバムを聴いたときに、“こうだったんだ、だからこういうタイトルなんだ、だからこういう曲なんだ”っていうことが、誰に聴いてもらっても、届くような気がしているんです。

取材・文◎BARKS

■アルバム『And I’m a Rock Star』
2017年1月11日(水)発売
NIW128 / 2,778円+税
01.サバク
02.I don't wanna dance
03.and I'm a rock star
04.真夜中のアイソレーション
※tvk「MUTOMA」1月度テーマソング
05.lime light
06.so lovely
07.walk around (feat. いつか [Charisma.com])
08.can you feel
※提供楽曲セルフカバー:FRONTIER BACKYARD mini Al「Backyard Session #2」収録
09.next to you
10.プラスティックレィディ
※提供楽曲セルフカバー:りぶ Al「singing Rib」収録

■インストアイベント情報
▼東京
<ツタロックpresents『順不同vol.1』フルカワユタカ × ent supported by 新代田FEVER>
2017年3月8日(水)新代田FEVER
OPEN 18:00 / START 19:00
出演:フルカワユタカ、ent ※順不同
※当日は2組ともソロのアコースティックライブを予定しております。
http://tsutaya.jp/jyunfudo-vol1/
▼大阪
<「AND I'M A ROCK STAR」発売記念!インストアイベント(トークショー&サイン会)>
2017年1月25(水)大阪 FLAKE RECORDS
OPEN / START 20:00
CHARGE / FREE ※優先入場券お持ちの方優先
http://dawaflake.exblog.jp/23517530/
▼名古屋
<「AND I'M A ROCK STAR」発売記念!インストアイベント(ミニライブ&サイン会)>
2017年1月27(金)タワーレコード名古屋パルコ店
OPEN / START 19:00
CHARGE / FREE ※優先入場券お持ちの方優先

■レコ発ツアープレイベント<フルカワユタカはこう弾き語った 第1回>
2017年1月26日(木) 京都 SOLE CAFE
※アコースティックワンマンイベント
OPEN 19:00/ START 19:30
(問)SOLE CAFE 075-493-7011

■東名阪ツアー<And I'm a Rock Star TOUR>
2017年2月10日(金) 東京 渋谷 WWW-X
OPEN 18:15 / START 19:00
(問)DISK GARAGE 050-5533-0888
2017年2月25日(土) 愛知 名古屋 JAMMIN'
OPEN 17:30 / START 18:00
(問)ジェイルハウス 052-936-6041
2017年2月26日(日) 大阪 梅田シャングリラ
OPEN 16:30 / START 17:00
(問)YUMEBANCHI 06-6341-3525

■<And I'm a Rock Star TOUR extra>(acoustic live)
2017年2月14日(火) 福岡 Queblick w/須藤寿
2017年2月16日(木) 札幌 KRAPS HALL w/須藤寿
2017年2月19日(日) 仙台 PARK SQUARE w/須藤寿
2017年2月28日(火) 吉祥寺 STAR PINE'S CAFÉ w/須藤寿

最終更新:1/11(水) 23:27

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