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過重労働にのめり込む宅配ドライバー 若者の「やりがい搾取」の現場

1/12(木) 17:00配信

BuzzFeed Japan

ネット通販により急成長する宅配業界をめぐり、トラブルが相次いでいる。「お客さまから感謝されること」にやりがいを感じるという宅配ドライバーの労働環境で、何が起きているのか。【BuzzFeed Japan / 小林明子】

【診断】再配達がこなくても許せますか?

商業ビルの8階で荷物を配り終えると、エレベーターは降下中だった。台車を肩に担ぎ上げて階段に向かい、1階まで駆け下りる。5階くらいまでなら、荷物を持って駆け上がることもある。

「早く配達を終わらせないと休憩時間がなくなるから、時間を節約するためです。それと、自分に火をつけるため。1年365日、(トラックに)乗らない日もあるから、身体をなまらせたくない。俺、忙しいほど燃えるタイプなんで」

大手宅配業者のセールスドライバーとして働くヨコタさん(24歳男性、仮名)。東京都心の商業地域を担当する。入社7年目、主任だ。BuzzFeed Newsが話を聞いた日は顧客のクレーム対応に追われ、帰宅したのは午前0時半。朝は5時半に起きて出勤している。

セールスドライバーとは、配達、集荷だけでなく、営業や物販、物流提案もする仕事だ。ヨコタさんには、やりがいを感じる瞬間がある。

「ヨコタさん、いつもありがとう」

お客さんに会社名ではなく、自分の名前を呼ばれるときだ。配達した荷物を客の要望に応じて地下倉庫まで運んだり、3階まで担ぎ上げたりする「プラスアルファのサービス」の積み重ねが、信頼関係を築く。お礼を言われ、名前で呼ばれ、お菓子や化粧品をもらうようになり、ようやく集荷をライバル業者から乗り換えてもらえる。仕事の成果につながるまでには、地道なプロセスがある。

汗水垂らして働く「佐川男子」

2016年12月、佐川急便の配達員が荷物を投げたり蹴ったりしている様子を撮影した動画がYouTubeに投稿され(現在は削除)、同社は謝罪した。駐車違反をした運転手が検挙を免れるために知人を身代わりとして出頭させた事件も発覚した。

佐川急便のドライバーはイケメン揃いだともてはやされ、「佐川男子」として脚光を浴びていたのは、ほんの数年前のことだ。

佐川急便の人材育成に密着した『佐川萌え』を2012年に出版したライターの坂口さゆりさんは、こう話す。

「取材したセールスドライバーの多くが、『お客様から感謝の言葉をかけられたときにやりがいを感じる』と声をそろえました。汗水垂らして働いて、生身の人間と接して血の通ったコミュニケーションをするーー彼らは現代において、とても純粋で根源的な仕事観をもっています」

一方で、こんな気づきもあったという。

「『感謝されることがやりがい』というのは、介護の現場を取材したときにも聞きました。給料や待遇が悪く身体的な負担が大きい仕事は、心がすさみがち。感謝されたい、承認欲求を満たしたい、という期待が高まりやすいと感じます」

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最終更新:1/12(木) 17:00
BuzzFeed Japan