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投資のスリルを創作エネルギーにした 作家・佐藤愛子と漫画家・西原理恵子

2/3(金) 15:40配信 有料

THE PAGE

 2007年頃から日本では主婦の外国為替証拠金取引(FX)トレーダーが増え、「ミセス・ワタナベ」という日本の個人投資家の総称が広まりました。現在もその売買が世界市場に影響を与えていると言われています。経済的に独立した女性ならば、自分で稼いだお金で投機もしくはギャンブルのような投資を行うことも可能です。投資を創作エネルギーとした作家・佐藤愛子(84)と漫画家・西原理恵子(53)の投資スタイルを市場経済研究所の鍋島高明さんが解説します。

 
  株にスリルを求め、創作エネルギーとしていった作家・佐藤愛子

 『戦いすんで日が暮れて』で直木賞を受賞し、90歳を超えたいまも精力的に執筆を続ける佐藤愛子。昨秋も『九十歳。何がめでたい』などベストセラーを生み続ける怪物のような女流作家。自著の中で書いている。

 「わが家には、株などというものに手を出してはならぬという家憲があった。私の母が暇にまかせて、株に手を出して、大損をして以来のことである。金というものは、額に汗して手にするものであって、労せずしてもうけを考えたりするとバチが当たって必ず損をするものだと教えられていた」

 その佐藤愛子が家憲にそむいて株式相場に手を染めるのは、文学仲間の北杜夫から、ある時「宇部興産を買いなさい」と勧められたからだ。ところが、結果は見事に外れ、大損する。普通の人なら「家憲を破ったバチ当たりメが」と深く後悔し、「二度とやるものか」とおとなしくなるところだろう。ところがそこは「怒りの愛子」の異名を持つ佐藤女史、より深く株の世界にかかわっていく。

 「大もうけして病みつきになったというならまだいいが、大損をして病みつきになり、えんえんと損をし続けている。今に取り返す、取り返せると思って深みにはまっていくのは江戸の賭博物語さながらである」

 株は賭博とは根本的に異なるが、一脈相通じるものがあるのは事実だ。株にはまる人の多くは「ビギナーズラック」(初心者の僥倖<ぎょうこう>)で思わぬ不労所得にあずかり、「おれには博才があるかも知れない」と思うようになり、段々深みにはまっていく。ところが、佐藤女史の場合は真逆である。かつて朝日新聞紙上で独特の投資哲学を披露したことがある。1986(昭和61)年5月のことだからバブル華やかなりしころだ。

 「私が株を買うのは、もうけるためではなく、スリルを楽しむためのようだ。…損をするたびにクソッ!チクショウ!と憤慨し、さあ働かねば!と一心に仕事をする。そのエネルギーのモトだと思えば、株の損もあきらめがつくのである」

 佐藤女史にとっては株の損失は創作のエネルギー源であったのだ。女史はみずから頭を絞って銘柄選びなどする暇はない。北杜夫ら仲間や証券会社の勧める銘柄に乗るだけ。ただ、1つだけみずから銘柄選びした株がある。それが全日空。

 女史は北海道に別荘を持っていて、夏には札幌-東京間を頻繁に往来する。そう、株主優待券欲しさに買ったものだ。それが大化けしたから、ほかの株でいくら損しても「私には全日空がある!」と思えば納得がいくそうだ。優待券ほしさなら日航株を買ってもいいはず。だが、日航株だったら後年日航が経営破綻したとき、紙切れになっていたのだから、彼女の銘柄選択は的を射ていたといえる。

 



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最終更新:12/8(金) 11:00
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