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東京五輪 選手への提供食材 国産大幅不足の恐れ

日本農業新聞 1/19(木) 7:00配信

 2020年に控える東京五輪・パラリンピックで選手や関係者らに振る舞う料理に使う国産食材の供給が、現状のままでは大幅に不足する恐れが出てきた。大会組織委員会は国産を優先的に選ぶよう求めるが、要件となる農業生産工程管理(GAP)の取得が「海外に比べて日本は進んでいない」(農水省)ためだ。大会関係者からは「食材の大半を輸入品が占めるのでないか」と不安の声が漏れる。五輪は海外に向けた日本の農産物アピールや販路拡大の絶好の機会だけに、GAP普及や供給体制の仕組み作りが求められている。

GAP取得進まず

 五輪の食材調達の基準は大会ごとに組織委員会が定め、12年のロンドン大会から持続可能性に配慮した飲食提供の基本戦略をまとめている。東京五輪・パラリンピック大会組織委員会は昨年12月に基準案を示し「グローバルGAP」「JGAPアドバンス」、都道府県などの確認を得た農水省の「GAPの共通基盤に関するガイドライン」に準拠したGAPを農産物の調達基準の要件とした。

 農水省によると「グローバルGAP」を取得しているのは約400農場、JGAPは約4200農場。野菜や米、麦、果樹、大豆の産地強化計画などを策定する4391産地のうち、グローバルGAPとJGAPを取得している産地は2%しかない。都道府県やJAなどのGAPが農水省ガイドラインに準拠しているかは調査中だが、要件となるGAPの確認ができる都道府県は現在、山形、静岡、島根、徳島、鹿児島の5県だけだ。

基準に合致 わずか

 東京大会の食材の必要量はまだ見えていないが、組織委員会によるとロンドン大会ではパン2万5000斤、芋類232トン、鶏肉製品31トン、肉類100トン、果実や野菜330トンなどを選手村に提供した。英国産農産物の使用割合は公表されていないが、ロンドン大会の食材調達の要件だった英国の「レッドトラクター」認証を農産物生産量の8割が取得していたという。

 日本でも、要件を満たすGAP取得を進めようと産地の機運は高まっているが、まだ一部だ。大会関係者によると、特にジャガイモやタマネギなど大量に必要となる野菜や肉類が逼迫(ひっぱく)する恐れが高い。農水省は「大規模な産地にGAP取得を働き掛けていきたい。現状のままでは五輪で国産での安定量確保は厳しい」(農業環境対策課)とみている。

 JGAPは日本GAP協会が産地情報を把握しているが、グローバルGAPはドイツの民間団体の制度。個人情報に関する部分の多くが伏せられており、農水省でも産地を把握できていない。東京大会の食材調達を見据えるケータリング業者は「産地の情報が非常に乏しい」と明かす。

 国産の農産物の供給力について、農水省和食室の担当者は「民間が主催する五輪に対し、農水省が国産を供給する目標を定めることは考えていない」とする。

 ただ、国際的な認証を取得することで安全・安心が明確な基準に裏打ちされる産地メリットは大きく、販路拡大にもつながる。大会関係者は「各産地やJAが個別にGAPを取得するだけではなく全国レベルの連携が欠かせない。五輪向けに供給できる産地の増加は大前提だが、情報発信と供給の仕組み作りが待ったなしだ」と提起する。(尾原浩子)

日本農業新聞

最終更新:1/19(木) 7:17

日本農業新聞