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ハイスペックで、礼儀正しい若者がデマサイトを作る 就活の失敗からそれは始まった

1/30(月) 7:25配信

BuzzFeed Japan

韓国人を誹謗中傷するようなニュースを発信するサイト「大韓民国民間報道」が完全なフェイク(偽)ニュースサイトであり、その目的が広告収入だったと明らかにしたBuzzFeed Newsの一連の報道は注目を集めた。

特に運営者への直接のインタビューで、まだ25歳の礼儀正しい男性が政治的な意図もなく、ただカネのためにデマを発信し続けていたという事実は、強い衝撃を持って受け止められた。

私(伊藤)は担当記者だった籏智とともにインタビューに同席した。籏智がアポをとった時に、どういう人物が来るかわからず、安全のために2人で向かった方が良いという編集長の判断があったためだ。

東海地方の郊外の街。駅のすぐそば。待ち合わせの場所に現れた運営者の男性は、拍子抜けするほどに礼儀正しい若者だった。

彼がどういう目的で、どんな手法でフェイクニュースサイトを運営していたかは関連記事を参照していただきたい。この記事では彼の人となりや考え方について、より詳しく紹介したい。(BuzzFeed News/伊藤大地・籏智広太)

丁寧に、論理的に、ヘイトに満ちたサイトを語る

取材場所に指定されたカフェは、チェーン店ではなかった。50年代のジャズが流れ、夜には酒も出す。調度品は、木製のものばかりで、温かみのある雰囲気だ。

「お待たせしました。今日は、東京から来られたんですか? ご足労いただき、ありがとうございます」

挨拶を済ませた男性は、大きな黒の鞄からノートパソコンと、タブレットを取り出した。サイトをどのように作ったか、どれだけ読まれていたか、詳細に説明をするためだ。

長身。細身。メガネ。清潔感のあるインテリ青年。自分が作ったニュースサイトについて、丁寧に論理的に説明する姿は、関心すらしてしまう。だが、サイトの中身は人々の憎悪感を刺激するデマなのだ。その落差に恐ろしさを感じた。

高い学習能力とマーケット分析

男性の動機はカネだった。

アメリカ大統領選で、マケドニアの少年たちが小遣い稼ぎのためにトランプ氏やクリント氏に関する偽ニュースを大量に配信。Facebookで、事実を伝える本物のニュース以上に拡散した。BuzzFeedがその実態を報じ、世界的に注目を集めた。

11月のある日。Googleニュースでフェイクニュースの問題を扱った記事を見つけた男性は、同じことを日本でやってみたらどうかと思いついた。

「金銭目的です。無職ですし、短期間でお金を稼ぎたかった。フェイクニュースは手っ取り早いだろうと考えました」

何を書くか。思いついたテーマが、韓国だった。

「私がやる前から、すでにネットでは、韓国について虚実が織り混ざっています。『韓国だったら、ありえる犯罪だ!』『韓国ならいつかは起こること』。フェイクであっても、こういうコメントがいっぱいあって、拡散する。望んでいる人がいる。コンテンツの対象として、やりやすいと思いました」

韓国に思い入れはない。だが、国内のニュースを扱うよりも、海外ニュースの方が訴訟を起こされるリスクも少ないという狙いもあったという。

プレゼンのような滑らかな口調で、サイト制作の過程を説明していく。

「効率よく」「手っ取り早く」。こうした言葉を繰り返す。1本の記事にかける時間は20~30分。時間をかけても拡散するわけではないから、効率を重視する。

特に文章を書くのが好きなわけでないという。デマ記事でも20分で書くのは、決して簡単なことではない。

だが、彼に書くことを苦にしている様子はない。「ニュースは、形式が決まってますから」とサラリと言ってのける。学習能力が高い。

マーケット分析もやっていた。

韓国を嫌う層という想定するマーケットに届けるために、元在特会会長の桜井誠氏を狙った。桜井氏のフォロワーを大量にフォローすることで、その人たちに逆にフォローしてもらう。そうして、桜井氏にまでソーシャルネットワークの線を繋いだ。

政治に関心はなく、ネットに詳しい青年がお金目当てにサイトを作る。会う前に想定していた人物像から、決して遠くはない。

驚かされたのは、その能力が非常に高かったことだ。しかも、コミュニケーション能力もある。ニヒルで、皮肉っぽい……そんなような人格を想像していたが、それは裏切られた。

ほとんど喜怒哀楽を表情や言葉に出さず、時々、笑顔を交えて話す。なぜこんな前途有望な青年が、世の中にデマを撒き散らし、関係する人を傷つけるフェイクニュースサイトの運営に手を染めたのか。

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最終更新:1/30(月) 11:04
BuzzFeed Japan