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「歌うそば屋」店じまい 富山市東岩瀬町の「丹生庵」

北日本新聞 1/31(火) 21:26配信

 富山市東岩瀬町の人気そば店「丹生庵(にうあん)」が、店主の志甫克芳さん(59)の病気のため閉店した。伝統的な町屋を改装した店舗と打ち立ての味は県内外のファンに愛され、音楽好きの志甫さんは「歌うそば屋さん」としても知られていた。閉店を惜しむ声が相次いでいる。

 丹生庵は2001年、市内から東岩瀬町に移転した。富山ライトレールの開業を機に客足は徐々に増加。俳優、作家ら著名人や外国人もよく訪れた。

 志甫さんは毎日午前4時からそばを打ち、出来たてを提供。店内にはグランドピアノやドラム、ギターが置かれ、弾き語りを来店客に聴かせることもあった。人柄のにじむ会話や演奏のもてなしに涙を流す人もいたという。

 昨年7月、脳の病気が見つかり、急きょ営業できなくなった。退院したものの体調は万全ではなく、1月に入って「閉店しました」と店頭に掲示した。志甫さんは「残念ながら、そばを作りたくても作れない」と話し「岩瀬の人たちには良くしてもらった」と感謝する。

 岩瀬への移転に協力したのは、東岩瀬町の桝田酒造店社長、桝田隆一郎さん(50)だった。材木店だった古い町屋を活用し、竹を使った岩瀬独特の格子「スムシコ」も取り入れて改装した。その後に東岩瀬まちづくり株式会社を立ち上げ、岩瀬の伝統的な町屋や土蔵の活用を手掛けてきた桝田さんにとっても「まちづくり第1号」の店だ。

 そばと日本酒を志甫さんが「着物と帯」に例えるように、桝田さんも「切っても切れない関係」と言う。丹生庵に足しげく通った桝田社長は、そばと一緒に日本酒を飲む人が増えていったことが印象に残る。「十数年、一緒にやってきた。簡単な言葉では表せない」と閉店について思いを語る。店にはそば打ちの道具などが残っており、桝田さんは今後の展開を模索する。

北日本新聞社

最終更新:2/1(水) 11:32

北日本新聞