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開業10周年、新宿バルト9“劇場ファン”を創出するユーザーファーストの視点

オリコン 2/13(月) 7:00配信

 近年、合唱上映やグッズを持ち込んでの応援上映など、劇場での映画の楽しみ方に変化が見られている。劇場の個性にも関心が集まるなか、数々のユニークな企画で多くの“劇場ファン”を獲得してきた新宿バルト9が、2月9日に開業10周年を迎え、さらなる盛り上がりを見せている。

開業10周年、新宿バルト9“劇場ファン”を創出するユーザーファーストの視点

◆満足度を高めるアイデアでアニメファンの聖地に

 07年の開館時に「日本初の全スクリーンデジタル対応シネコン」として話題を集めた新宿バルト9。その後、アニメファンの聖地として、また斬新な上映方式の発信地としても次々に世の中へトピックを提供。シネコン激戦エリアと称される新宿でも際立った存在感を放ちながら、2月9日に開館10周年を迎えた。

 「そもそも単なる映画館を超えた、エンタテインメントの複合体を目指すことは、ティ・ジョイのポリシーでもあります。運営実務を担当しているバルト9においても、音楽やスポーツのライブビューイングや、演劇と映像の融合する『ゲキ×シネ』など、開業当初よりさまざまな試みを行ってきました。そうした方向性がお客様に受容された結果として、ちょっと規格外の上映企画などであっても、きちんと受け入れてもらえる土壌を形成できたのかもしれません」(ティ・ジョイ 田代天馬氏)

 10周年にあたり、同館らしい多様な記念企画が展開されている。共通するのはそうした観客=ファンの満足度へのこだわりだ。

 「10年を振り返り、当劇場を訪れるお客様と親和性の高い作品は、と考えた内容です。今回の企画に限らず、通常でも、常にこの作品ならどういう形式での上映が喜ばれるだろうかという視点で、関係各所の協力をいただきながら企画を検討します。新しい企画をバルト9でやってみたい、とご提案いただく機会も増えています」(新宿バルト9 島田貴行氏)

 発声や歌唱もOKといったイベント性の高い上映手法は、実は昨年バルト9でロングラン1位(16年1月~6月)となったアニメ作品『KING OF PRISM oy Pretty Rhythm』が端緒。ここに来れば作品を思い切り楽しめると、全国各地からファンが詰めかけ、“聖地化”された。

 「キッズ向けの応援上映は行っていましたが、いわゆる大人向けは初めてでした。そこでの非常に熱烈な反応から、映画のキャラクターに声援やレスポンスを送りつつ楽しむという参加型の鑑賞スタイルが、実は意外に幅広い作品で有効ではないのか、と考え、さらに対象作品を拡大していったという流れです、当館にはアニメ好きのスタッフも多いので、ファン心を理解した丁寧な接客を率先して行ってくれたことも、成功した要因かもしれません」(島田氏)

◆「祭りに参加したい」という意欲をいかに喚起するか

 今、劇場での映画鑑賞は、既存の3D、4Dといった体験型アトラクションに加え、さらに参加型イベントとしての付加価値をメニューとして加えつつある。

 「映画館が、不特定多数の人が集まって体験を共有する場であることは黎明期から変わっていません。スマホや動画配信が普及し、個人がコンテンツと触れ合う機会は増えていますが、一方ではSNSの普及によって、本当に優れた作品が口コミで評価され、素晴らしい体験を誰かと共有したいという欲求も高まっている。我々はその欲求にどう応えて、特別な体験を提供できるかを考えています」(田代氏)

 4Kライブビューイングによる自衛隊の富士総合火力演習の中継や、訪日・在日外国人向けにアニメなどを英語・中国語の字幕付きで上映する企画「YOKOSO! EIGAKAN!」、ラテン諸国の映画を集中上映する『ラテンビート映画祭』など、同館の企画はいずれも一定の熱量を持つコアターゲットを意識したものが多い。

 「公開初日に合わせて宣伝費を大量に投入するのではなく、祭りに参加したいという意欲をいかに喚起するかを意識します。劇場で観ることの楽しさをいかに演出するか。そこにこだわって、次の10年にも繋げていきたいですね」(島田氏)

 ユーザーファーストの基本姿勢を遵守しつつ、着実にコアファンを増やしている新宿バルト9。周年企画は今後も順次、発表していくという。

(文/及川望)

(コンフィデンス 17年2月13日号掲載)

最終更新:4/20(木) 15:25

オリコン