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ゼロエネルギー住宅、じわり存在感

ニュースソクラ 2/15(水) 13:00配信

【緑の最前線(37)】住宅の温暖化ガス排出急増で

 温暖化対策の切り札として、ゼロエネルギー住宅(ゼロエネルギーハウス=ZEH)の存在感がじわり増してきた。ZEHとは家庭内で消費される電気やガスなどのエネルギーから太陽光発電などで発電した分を差し引き、実質的なエネルギー消費量をゼロにした住宅のことだ。当然だがZEHが実現すればCO2などの温室効果ガス(GHG)の排出もゼロになる。

 ZEHが最近注目されるようになったのは、家庭部門(個人住宅)の温暖化ガスの排出量が急増しているためだ。環境省調べによると、日本のGHGの排出量のうち、家庭部門の排出量は約15%を占めている。産業部門(33%)、オフィスビルなどを含む業務部門(21%)に次いで、運輸部門(17%)とほぼ肩を並べている。1990年比でみると、14年度の産業(製造業)部門のGHGの排出量は約15%減、運輸部門は5%と微増に止まっているのに対し、家庭部門は47%と大幅に増加している。従って増加が著しい家庭部門の温暖化ガスの排出削減に成功すれば大きな成果をあげることができる。

 日本の伝統的な木造住宅は北海道や東北、北陸地方などの寒冷地は別として、人口密集地の東京、大阪、名古屋などでは夏涼しい住宅づくりが一般的だ。しかし高度成長期を経て生活水準が向上してくると、自然の風の流れなどに頼らず、エアコンを使って夏場、冬場の室内温度を人工的に一定に保つライフスタイルが定着してきた。元々夏場の風通しを良くする工夫が随所に施されている日本の木造住宅で、夏場、冬場の室内温度を一定に保とうとすれば、エネルギー消費が大幅に増えてしまう。

 家庭部門のエネルギー消費は大きく分けてエアコンや電気、灯油ストーブなどによる冷暖房、日常の炊事やお風呂に使うための給湯、照明、テレビ、冷蔵庫、洗濯機などの家電類がそれぞれ3分の1を占めている。

 90年比で50%近くもGHGが増えている家庭部門では、その排出抑制のために建物全体を省エネ型に転換させる必要がある。

 政府は2030年にGHGの排出を13年比26%削減する方針だ。その実現のためには年間約40万戸、30年までに約6千万戸の新設住宅をZEHにする必要があると推定している。ZEHは通常の新築住宅よりも200~300万円ほど割高と言われている。そこで政府(経済産業省・資源エネルギー庁)は差額の一部を補助金で支援する政策を打ち出した。

 ZEH支援事業(補助金制度)は16年度からスタートするが、支援を受けるためには、住宅メーカー、工務店、建設設計事務所などは、自社が受注する住宅のうちZEHの占める割合を2020年までに50%以上にする目標を宣言・公表しなくてはならない。この条件を満たした住宅メーカーなどは「ZEHビルダー」と呼ばれ、支援対象企業として登録できる。資源エネルギー庁によると、17年1月現在、住宅メーカー、工務店を中心に全国で4224社がZEHビルダーとして登録している。

 20年の目標を公表したZEHビルダーの上位を見ると、有力住宅メーカーが目立つ。たとえば、ミサワホームは20年には同社の新築住宅の90%、積水ハウス、パナホームは80%、旭化成ホームズ70%、セキスイハイム65%などとなっている。

 ZEHの具体的なイメージとしては、(1)太陽光発電による電力生産、(2)燃料電池による発電と余熱による給湯、(3)複層ガラス、高断熱材使用による冷暖房の効率化、(4)LED照明と省エネ型家電の導入、(5)通風、自然光配慮設計などだ。つまり、ZEHは創エネと省エネを組み合わせることで、既存の電気やガスのエネルギー消費をゼロにする試みと言えるだろう。

 ゼロエネルギー住宅開発のパイオニアである積水ハウスは、2009年からCO2排出を90年比50%以上削減する住宅づくりを目指し、12年までに全販売戸建住宅の84%を占めるまでになった。この経験を生かし、13年からZEHに挑戦し14年には新築住宅の59%(6332棟)をZEHにし、政府目標の50%以上を早くも実現している。15年のZEHの割合は71%(7442棟)、16年は75%を目標にしている。同社が13年から16年6月までに販売したZEHは、累積で2万2614棟に達したという。

 政府のZEH補助金制度が軌道に乗り、大手住宅メーカー、工務店などが本格的にZEHに挑戦してくれば、家庭部門の温室効果ガスの排出抑制に大きな貢献が期待できるだろう。

■三橋 規宏(経済・環境ジャーナリスト、千葉商科大学名誉教授)
1940年生まれ。64年慶応義塾大学経済学部卒業、日本経済新聞社入社。ロンドン支局長、日経ビジネス編集長、科学技術部長、論説副主幹、千葉商科大学政策情報学部教授、中央環境審議会委員、環境を考える経済人の会21(B-LIFE21)事務局長等を歴任。現在千葉商大学名誉教授、環境・経済ジャーナリスト。主著は「新・日本経済入門」(日本経済新聞出版社)、「ゼミナール日本経済入門」(同)、「環境経済入門4版」(日経文庫)、「環境再生と日本経済」(岩波新書)、「日本経済復活、最後のチャンス」(朝日新書)、「サステナビリティ経営」(講談社)など多数。

最終更新:2/15(水) 13:00

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