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大型の財政出動でデフレ脱却? 注目を集める経済理論「FTPL理論」って何?

2/22(水) 15:00配信

THE PAGE

 金融緩和だけでなく、大型の財政出動によってデフレ脱却を実現するという経済理論が今、注目を集めています。事実上のヘリコプターマネー論に近いものですが、安倍政権の経済ブレーンである浜田宏一米エール大学名誉教授が高く評価していることもあり、一部から政策導入への期待が高まっているようです。

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 この経済理論を提唱しているのは、ノーベル賞経済学者である米プリンストン大学のクリストファー・シムズ教授です。同氏が提唱する「物価水準の財政理論(FTPL)」は、従来型の量的緩和策ではなく、物価目標達成のために大型の財政出動を組み合わせるというものです。

 量的緩和策の理論的な根拠となっていた貨幣数量説では、物価水準は市場に供給されるマネーの総量で決まるとされています。量的緩和策は日銀が大量に国債を購入することで市場にマネーをバラ撒き、これによって市場にインフレ期待を発生させるという政策でした。つまり、マネーの量が物価水準を決めるという大前提があるからこそ機能する政策といえます。

 しかしFTPLでは、貨幣数量説は肯定しながらも、物価の決定要因はそれだけではないと指摘しています。FTPLが重視しているのは、政府の累積債務の量や将来の財政収支の見通しです。政府が将来にわたって増税しないと確約し、意図的に財政赤字を拡大させればインフレが促進されると考えます。

 現在の日本のように金融政策に手詰まり感が出ている状態の時にはこの施策は有効に作用するとシムズ氏は主張しています。また、コントロールされたインフレを実現できれば、政府債務の実質的な水準は低下しますから、財政再建も達成されるという仕組みです。

 細かい学術的な定義はともかくとして、FTPLは、これまで何度か議論されてきた、財政ファイナンスやヘリコプターマネー論と基本的に同一のものと考えて差し支えありません。この政策を強力に推進すれば、インフレになる確率は一気に高まるでしょう。政府としては増税をしなくても済みますし、大型の公共事業が次々と実施されますから、公共事業に利権を持っている政治家も大喜びかもしれません。

 しかしながら、こうした政策には大きな副作用もあります。強制的なインフレ政策は、金利を急騰させる可能性がありますし、何よりインフレの進行によって預金者のお金が事実上、税金に近い形で政府に奪われてしまいます。インフレ政策は事実上の増税であるということを国民が理解した上での決定であれば問題ありませんが、このメカニズムをすべての人に周知徹底させるのは容易ではないでしょう。

 ただ、このまま何もしなければ、近い将来、日本において金利の急騰や過度なインフレが発生する可能性は確実に高まります。何もしないよりは、意図的にインフレにしておく方がよいというシムズ氏の主張に魅力を感じる専門家は意外と多いかもしれません。

(The Capital Tribune Japan)

最終更新:3/1(水) 11:05
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