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『ラ・ラ・ランド』は自分をまるごと愛する勇気をくれる、チャーミングなミュージカル

2/22(水) 12:30配信

Stereo Sound ONLINE

作れるひとが限られるジャンル

 ミュージカル映画というのはへんてこりんな表現様式である。楽しかったり悲しかったり。喜怒哀楽を覚えると登場人物の口からは歌があふれ出し、道端でもレストランでも職場でも、ところ構わず踊り出してしまう。

 唐突に映画の様相が変わるので置いてけぼりを感じるときもあるよなーと思いながらも、この20年くらいを振り返ってみると『ムーラン・ルージュ』『シカゴ』『オペラ座の怪人』『ドリームガールズ』『バーレスク』『レ・ミゼラブル』と、観る者を別世界に連れて行ってくれる粒揃いの名作揃い。

 もう少し遡ると、ボブ・フォッシーの『キャバレー』(1972年)と『オール・ザット・ジャズ』(1979年)、ロック・ミュージカルの『Tommy/トミー』(1975年)や『ロッキー・ホラー・ショー』(1975年)、さらに遡ってジーン・ケリーの『雨に唄えば』(1952年)、オードリー・ヘプバーンの『マイ・フェア・レディ』(1964年)、『サウンド・オブ・ミュージック』(1965年)や『チキ・チキ・バン・バン』(1968年)。

 変わったところでは愛すべき変態ジョン・ウォーターズ監督の青春もの『ヘアスプレー』(1988年)や、フランソワ・オゾン監督のオールスター作品『8人の女たち』(2002年)なんてのもあった。

 風変わりでゴージャスなジャンルゆえ、作れるひとだけが作ることのできる選ばれた映画群といえるのかもしれない。

 この春、そんなミュージカル映画の系譜にもう1本、掛け値無しの快作が加わることになった。ジャズ・ドラマー志望の青年と鬼教師の激突を描いた『セッション』(2014年)で世界をビックリさせたデイミアン・チャゼル監督の新作『ラ・ラ・ランド』。

 大推薦! 映画ってこれだよなあ、と観るひと全員を幸せにするチャーミングな逸品である。

スクリーンの「あちら側」と「こちら側」をフラットに

 ワーナー撮影所内のカフェでバイトしながら女優を目指しているミア(エマ・ストーン。レモンイエローのドレスとか、今回もそうとう可愛い)と、いつかは自分の店をと思いながらもぶらぶらし、姉貴に“もっとしっかりしなさいっ”と怒られているジャズ・ピアノ弾きの青年セブ(ライアン・ゴズリング)の恋物語。

 タイトルの『La La Land』は映画の舞台であるロサンゼルス(L.A.)の街と、現実離れした夢の国を表わす言葉の両方に掛けられており、それがミュージカルという大きめのティーカップのなかでくるくると踊っているのだ。

 考えてるなあ、バランスがいいなあと思わされるのは、へんてこなジャンルであるミュージカル映画への敷居が低く作られていることで、高速道路を舞台にしたオープニングの群舞からも大仰な盛ってる感は削ぎ落とされている。舞台ミュージカル出演の経験もあるエマに比べてゴズ坊の歌も上手くはないし。

 でもこのカジュアルな雰囲気がいいのだ。スクリーンのこちら側と地つづきになっているようで。

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最終更新:2/24(金) 17:46
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