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【特集/UCLラウンド16プレビュー 8】番狂わせへの唯一の道は奇跡を起こしたあの正攻法! セビージャ×レスター

2/22(水) 19:01配信

theWORLD(ザ・ワールド)

あらゆるビッグクラブが手を焼いた緻密な堅守速攻

歴史を作る。まさにその一心でチャンピオンズリーグでの快進撃を夢見るレスター・シティだが、ベスト8進出を懸けたセビージャ戦においては、残念ながら「敗退」を断定するネガティブな声が少なくない。

無理もない。昨季との比較における“現状”のレスターに、ポジティブな要素は見当たらない。前年度王者として臨むプレミアリーグは、第21節終了時点で5勝6分10敗、勝点21でまさかの15位。降格圏である18位との勝点差はわずかに「5」と苦戦が続く。選手個々のパフォーマンスを見ても、昨季24得点のジェイミー・バーディはここまで5得点、同17得点のリヤド・マフレズは3得点と2大エースのゴール数が伸びず、新戦力イスラム・スリマニのパフォーマンスもいまひとつ。得意のカウンターも迫力不足。守備の要であるウェズ・モーガンとロベルト・フートのCBコンビに安定感はなく、タフさの足りない中盤ではチェルシーに放出したエンゴロ・カンテの不在が嘆かれるばかりだ。

印象的には、昨季は“想定外”に対応し切れなかったビッグクラブの“レスター対策”が機能しているわけでは決してない。もちろん、昨季を「奇跡」と位置づけるなら今季の低調も受け入れるしかないが、それにしても「お前らの力はそんなもんじゃないだろ!」と言いたくなるのは、目の前で奇跡を目撃してしまったサポーターの心理に違いない。

さて、本当に、レスターはセビージャに勝てないのだろうか。今季のレスターは、明らかにチャンピオンズリーグでの勝利に力を注いでいる。欧州カップ戦の素人に“二足のわらじ”は荷が重く、クラウディオ・ラニエリは豊富な経験からそのことを理解している。だから、たとえプレミアリーグで負けが込んでも、動じず、慌てず、声を荒げず、いたってクールにポジティブな発言を繰り返した。そこまではいい。過去にいくつものビッグクラブを率いてきた経験の賜物だ。

しかし一度成功すると“色気”を出したくなる性分は、この指揮官の致命的な泣きどころだ。彼が指揮するチームを評する「一時は好調だったが」との言葉は、どのチームを率いた時も用いられた定型句である。

昨季の正攻法は文字通りの「堅守速攻」。ピッチの中央を締めて泥臭く守り、距離の長いカウンターを仕掛けてゴールを奪い、勢い良く勝点3をもぎ取った。ところが今季、「プレミア王者」の冠がその正攻法に恥ずかしさを覚えさせたのか、指揮官はチームのスタイルを大きく変える奇策に出た。バーディの相棒として最前線に据えたのは、高さと強さだけならワールドクラスのスリマニ。典型的なストライカーは“待つ意識”が強く、「堅守速攻」の第一段階となる守備面で機能しない。試合によってはよくボールを追いかけているが戦術としての意図は感じられず、あるいは岡崎のように、チーム全体を鼓舞し、運動量を高める雰囲気もその背中からは感じられない。

レスターの堅守速攻は、ただ「守って攻める」よりずっと繊細かつ緻密だ。そのメカニズムに「1」から「10」の段階があるとすれば、どれが欠けてもハマらない。「1 」(前線からの巧みなチェイシング)がなければ、全体が機能しないのも当然のこと。スリマニ個人の問題というより、彼の起用を象徴的な事例として昨季までの“正攻法”を捨ててしまった指揮官に問題がある。

色気づいたラニエリの迷走は、シーズンの半分を消化しても止まらない。指揮官は、第19節ウェストハム戦では[4-3-3]、第20節ミドルズブラ戦では中盤ダイヤモンド型の[4-4-2]、第21節チェルシー戦では[3-5-2]を採用。システムや戦術を目まぐるしく変えるうちにチームとしての軸がブレ始め、ピッチ内では “らしさ”を失った選手たちが右往左往し、疑念を抱えて困惑している。1月半ばを過ぎた現時点でのチーム状況は、極めて悪い。

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