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ドイツに厳しいトランプ米大統領 米独首脳会談見通したたず

2/23(木) 15:00配信

ニュースソクラ

トランプ発言研究するメルケル氏、安倍首相とは違う路線に

 蜜月とされる日米関係とは対照的に米欧関係が不安定だ。特に、欧州の盟主とされるドイツのメルケル首相に対し、トランプ米大統領は露骨に非難してきた。

 メルケル首相の難民受け入れ政策は大間違いで、このような政策を取ったがため英国がEUから出ることになったと、英国やドイツの有力紙のインタビューに答えている。

 メルケル首相はオバマ前大統領の信任が厚く、オバマの大統領として最後の電話はメルケル首相へのものであった。それだけにトランプ新大統領との関係はよくないと思える。今後の米独関係は波高しである。

 米欧対立は安全保障と通商の両面。訪欧したマティス米国防長官は、欧州諸国に軍事費の増大を求めた。

 経済面では、対独貿易赤字が摩擦の原因だ。トランプ政権は、米国の貿易赤字は製造業から雇用を奪う悪とみなし、米国の貿易赤字が大きい相手国、中国、日本、ドイツを激しく攻撃してきた。

 トランプ政権は、すでに中国や日本が為替操作により自国通貨安を実現させ、米国へ輸出攻勢をかけていると非難していたが、1月末、とうとう非難の矛先がドイツへ向かった。トランプ政権で通商政策をつかさどるナバロ氏が、ドイツはユーロをドルに対して安くさせることによって対米貿易黒字を拡大させていると批判した。

 ドイツは、昨年、世界最大の貿易黒字を記録した。黒字額は3千億ドルで、2位の中国の2千5百億ドルをはるかに上回る。経常黒字額も対GDP比9パーセントに達しており、G7やG20の会合で各国から是正を求められている。

 またEU委員会からも強い是正勧告を受けている。しかし是正はされず、経常黒字の対GDP割合は数年前の6%からさらに拡大している。

 このためトランプ政権がドイツを非難するのは当然である。しかし、ドイツは他の国とは異なり自国通貨を持たない。したがって為替操作により、ドルに対して自国通貨を切り下げることはできない。

 ドイツのショイブレ財務相は、米国からの批判のあった翌週、「ユーロはドイツの国際競争力を考えると割安に放置されている。ユーロ安の原因となっている量的緩和政策をやめないとドイツの貿易黒字は未曾有に増えるとECBに警告してきた」と発言している。

 イタリアなど国際競争力の低い国の対独貿易赤字は、ユーロ導入後急増しており、これがこれらの国の長期にわたる経済低迷の原因となっている。ユーロ導入前は、イタリアとドイツの国際競争力の差は通貨によって調整されてきた。対独貿易赤字が拡大するとリラがマルクに対し下げ調整された。

 イタリアの最大野党-五つ星運動は、イタリア経済再生のためユーロ圏からの離脱を主張している。また、フランス大統領選で決勝戦進出間違いないと予想されている、国民戦線党首ル・ペンは当選した暁にはフランス・フランを復活させると主張している。一方ドイツでは、ユーロを維持するため国際競争力の低い南欧諸国を財政支援させられるのではないかと懸念する有権者が多く、これらの人たちはEUに批判的な政党AfD(ドイツのための選択肢)を支持している。AfDの支持者は急速に増えている。

 確かにユーロが多くの問題の原因となっている。しかしもしユーロを廃貨にすると、これまでのユーロ建ての債務を競争力の低い国が返済することができるのかという頭の痛い問題が残る。

 米国の対独批判を受けて、イタリアのレンツィ前首相は、ドイツに対しユーロ圏の景気回復のため、ドイツが財政出動をすることを求めた。またEU委員会も財政収支に余裕のある国は、ユーロ圏の経済不均衡を是正する処置を取るよう求めてきたが、ドイツは、「財政収支を均衡させることが最重要課題だ」と要請を拒否してきた。いつまでドイツは、このかたくなな姿勢を維持できるのだろうか。

 トランプ、メルケルは電話会談は実施したが、米独の首脳会談のめどはたっていない。メルケル首相は欧州連合(EU)諸国は結束して独自の道を歩まなくてはならないと発言している。メルケル首相はトランプ新大統領との早期の2国間首脳会談で、ドイツやEUの立場を説明することを希望していると伝えられている。

 報道によるとメルケル首相は、会談にそなえてトランプ新大統領のこれまでの発言内容をつぶさに研究しているとのことだ。論理で説得しようと考えているようで、トランプ批判を極力抑え、新大統領とのパイプを築いた日本の安倍首相とは違ったアプローチになりそう。溝をさらに深めることにならないか、米独関係は波高しである。

■茶野 道夫(ウィーン在住コンサルタント)
日系金融機関のウイーン駐在代表を定年退職後、不動産投資コンサルタント。日系金融機関のウイーン駐在代表をつとめた後、定年退職。ウイーンで、不動産投資コンサルタント。英、独、仏、西、伊、露語に通じ、在欧経験28年。英国、スペインにも勤務。

最終更新:2/23(木) 15:00
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